研究課題/領域番号 |
25380092
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
岡田 悦典 南山大学, 法学部, 教授 (60301074)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 公判前整理手続 / 刑事訴訟法 / 証拠の関連性 / 目撃証言の許容性 / 集中審理 |
研究実績の概要 |
具体的には、わが国の公判前整理手続の在り方についてまとめる作業を行った。すなわち、公判前整理手続につきわが国の現状の課題(長期化、多様化)を検証した上で、わが国の最高裁判例がどのような態度を示しているのかを、平成21年および平成26年に出された判例を下に分析し、その理論的基礎を研究した。合わせて、裁判官が手続にどのように関与すべきかを検討し、争点形成、証拠厳選につき、基本的に裁判官は関与すべきではないことを論証するとともに、証拠の関連性の問題としてルール化することが重要であることを指摘し、かつ、手続的規制として弁護権保障の観点から公判前整理手続を規制すべきではないかということにつき検証した。このような検証の結果を、平成26年10月の刑法学会名古屋部会で個人報告し、合わせてその論文を南山法学に投稿した。関連する研究として、アメリカの弁護権に関する現状分析の論文を公表することができた。こちらは、公判前整理手続や関連性研究とは若干距離を置くが、有効な弁護を受ける権利の展開について検証するものであり、証拠の関連性に関する手続的基礎を検証すること、すなわち準備手続論を検証する上では、重要な関連する取り組みであった。このことは、公判前整理手続の手続的規制の論旨の一要素とすることができた。このようなわが国の問題状況を検討する中で、あらためて、Motion in Limnieなどのアメリカの申立て手続についても検討するとともに、特にアメリカ法における裁判官と陪審との関係について、証拠の関連性・許容性の議論の観点から、研究・考察を継続することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、予定通り、わが国の公判前整理手続の段階での争点の絞り込みに関する近年の議論を整理することができ、わが国の公判前整理手続に関する議論状況と課題を、ある程度、整理することができた。そして、手続的規制という視点から、今後の展望を論証し、また、証拠の関連性と連動して検証したことにより、具体的な成果をまとめることができた。Motions in Limine、Motions to Strike、Objectionsといったアメリカの手続の動向についても文献などを収集して、検討を行うことができた。そして、日本の議論とどのように繋げていくべきかを、現在検討中である。さらに、アメリカ証拠法におけるRelevanceについての二つの側面、すなわちMaterialityとLogical Relevanceについても、その基礎的把握に努めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、アメリカ法におけるMotions in Limineなどの申立て手続について、まずはその基礎的な内容・性格・役割などについて、証拠の関連性と関連づけてまとめてみたいと考えている。この間、公判裁判官と陪審との関係についても、アメリカ法の基礎を検討することが重要であると考えるに至ったので、このことを、わが国における示唆を得るためのアメリカ法の分析の仕方に応用していく予定である。また、予定通り、3年目に行う課題である上訴審の役割についても、検証を開始することとしたい。すなわち、アメリカの上訴審(Appellate Court)に関する審査機能の特徴を把握するとともに、審査が可能となる基準についてのルール、また、審査に及ばないとする制限のルールとしてのdoctrine of preservationという法理を、具体的に検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
可能であれば、海外ヒアリングを予定していたのだが、なかなか実現可能性がなかったことと、逆にその分を国内の文献調査に力を入れることとしたため、そちらに資金を補充したところではあったが、若干額を次年度にまわすこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
若干額の補充があるために、可能であれば、海外ヒアリングを予定している。もし実現可能性がない場合には、文献調査、学会・研究会出張などを充実させて、目的を達成したいと考えている。
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