平成27年度には、①アメリカ法におけるMotions in Limineについて、具体的な文献を調査するとともに、②公判前整理手続の現状と最近の最高裁判例、及び証拠の関連性についての議論、争点整理についての議論の整理をすすめた。その結果、後者については、論文「公判前整理手続の手続的規制」と題して、公刊論文を公表することができた。アメリカ法の関連性についての研究は、文献調査をして、前記「公判前整理手続の手続的規制」において、若干議論の参考とすることができた。さらに、引き続き、①刑事訴訟法316条の32における公判前整理手続終結後の証拠請求制限に関する判例を詳細に分析するとともに、これまでの立法趣旨、議論状況を整理し、具体的な判例法理を明らかにすることができた。また、被告人の防御権の視点から、準備手続における弁護懈怠やさらに被告人の防御の観点から、同条文の片面的性格についてのアイディアを得ることができ、その具体的な主張の輪郭を検討することができた。これに加えて、②近時明らかにされた被告人の主張制限に関する判例(最決平成27・5・25刑集69・4・636)の分析を行った。このことから、最高裁決定の意義ないし課題を明らかにすることができ、その理論的限界を明らかにするという研究成果を得ることができた。そして、これらの研究成果を、昨年度の1月の研究会(青山学院大学)及び3月の研究会(一橋大学)において報告することができた。また、この過程で控訴審などの上訴審の役割と公判前整理手続の役割との関係、不十分弁護の抗弁についても併せて考察することができた。
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