研究課題/領域番号 |
25380094
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
富田 哲 福島大学, 行政政策学類, 教授 (40197926)
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研究分担者 |
清水 晶紀 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (20453615)
長谷川 珠子 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (40614318)
塩谷 弘康 福島大学, 行政政策学類, 教授 (50250965)
山崎 暁彦 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (50451505)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原子力損害賠償紛争解決センター / ADR / 民事損害賠償請求 / 因果関係 / 除染 / 原子力規制 |
研究実績の概要 |
2014年度においては、前年度を受けて、文献収集とそれの分析を中心に行った。とりわけ以下の点につき、成果があがっている。 第1に、原子力損害賠償紛争解決センター(ADRセンター)の活動状況および同センターによる和解あっせん事例の検討についてである。2013年度末に開催したADR関連のシンポジウムにつき、その成果の取りまとめを行っている。現在、同センターによる約1000件の和解あっせん事例を文部科学省のホームページで見ることができ、これの分析を行っているところである。とくに民事訴訟との相違に着目して分析を進めている。 第2に、民事訴訟については、福島県内で判決が出されたケースを中心に検討を進めている。たとえば平成26年8月26日の福島地裁判決の分析・検討等である。同判決は原発事故と自死者との因果関係をめぐる争いであり、請求額の約8割を認容したのであるが、因果関係の立証につき、過労自殺等の労災ケースの手法を取り込んでいるところが注目される。 第3に、現在、福島まで行われている除染作業に関する調査・検討である。除染の手法およびその効果については、さまざまな見解が出されているが、被害者・被災者の視点からの検討が必要であると考える。さらに国・地方自治体による除染のほか、任意の除染も問題となっており、これも対象となる。 第4に、アメリカにおける原子力規制に関する立法政策との比較・検討を行った点である。原子力発電所の再稼動が問題となっている今日、重要な課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究における研究手法として、文献研究と実態調査等のフィールドワークとの結合を掲げていたが、この両分野につき、進捗状況につきアンバランスがみられる。 第1に、判例研究であるとか、原子力損害賠償紛争解決センター等の行政関係の文献資料にもとづく研究は、ほぼ順調に行われているのに対して、実態調査等については、あまり習熟していないこともあって、その整理・取りまとめに時間を要することとなり、たとえ実態調査を実施しても、個々人によるメモ等の形で原資料のまま手付かずの状況となっているものも多く見られる。 第2に、研究メンバー相互間の交流が不活発であった。当初予定していた全員参加の研究会の開催も少なく、それゆえ、個々のメンバーが自己と関連する全国規模の研究会に参加することが多くなってしまった。それゆえ、本研究を全体として活性化させることが不十分であった。ただし、個々により集積された資料を授業であるとか、各種の研修会等で利用していることは多い。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、本研究の最終年度であるので、この2年間の出遅れを取り戻し、社会貢献につながるような成果を出せるような年度としたい。 第1に、内部での研究会を活性化させ、相互に其進捗状況を確認しあうことによって、研究を進めていくことにしたい。 第2に、実務家(弁護士、司法書士、行政書士等)との連携のもとに研究を進めていくことを予定していたが、実際には、個々の関係者からの聴き取り等ですませたことも多く、この点に関しても、組織的な研究体制を再構築することにしたい。 第3に、研究成果の公開方法はこの2年間、個人任せであったが、最終的な報告書については、以下の点を考慮して作成していきたい。①個々人の研究であっても、それを出版できるような水準を確保すること、②実務家(裁判官および弁護士等)にとっても、有益な報告書となることを目指すこと、③教育重視の人材育成大学として、学士課程および大学院における教育にも資するような報告書をつくること、等を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が大きくなった理由は、以下の点にある。 第1に、支出部分につき、研究会・シンポジウムの必要経費としての「共通部分」と個人に割り当てる「個人部分」とに分割しているが、①共通部分については、2014年度はシンポジウム等の開催ができなかったこと、②個人部分については、節約志向もあるが、やはり原発事故関係の他の外部資金の獲得等により、使用状況のアンバランスが大きくなったことがあげられる。 第2に、現在、図書館の増設工事により、発注業務等に時間を要する事態となり、とりわけ外国書籍の発注を見送るケースが増加した。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度は本研究の最終年度であり、上記のうち、「共通部分」を多めに確保することとしし、具体的には、①研究会等を定期的・積極的に開催すること、できれば市民向けのシンポジウムを開催すること、②社会貢献をも兼ねた形での成果報告書等の経費を増額すること、等で対処していきたい。
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