研究課題/領域番号 |
25380097
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 亘 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (00282533)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 会社法 / 株主の地位 / 非公開取引 / オプション / 株式の取得価格決定 / 株式買取請求権 / 公開買付けの強圧性 |
研究実績の概要 |
本研究は、株主の地位をオプションと捉えることができるという、ファイナンス理論の知見を基礎として、会社法制において株主のオプション利益をどの程度保護することが望ましいかを考察することを目的としている。研究の進展に伴い、申請者の問題関心は、非公開化取引における株主の地位の問題に集中していくようになった。非公開化取引においては、支配株主の決定するタイミングで、少数株主がその地位を失い金銭を受け取ることとなるが、これは、企業の継続的価値を享受する株主のオプション的地位を剥奪することにつながる。そこで、その剥奪に伴う補償としてどれだけの価値が少数株主に与えられるべきか、また、その価値を保障するためにどのような法的手続を用意すべきかという点が、重要な問題となる。現行法制では、こうしたオプション的地位剥奪の補償としては、株式買取請求手続または取得価格決定手続が用意されていることから、これら手続において、裁判所は株式の「公正な価格」をどのように決定すべきかが、重要な研究課題となる。申請者は当該年度に、「公正な価格」の決め方についての包括的な研究を行い、その成果を公表した(研究成果の「図書」参照)。また、申請者は前年度から、わが国の公開買付けについて実証的に研究するとともに、その研究結果を基礎として、わが国の買収法制の望ましいあり方について提言を行うことを目的とする研究会を、研究者および実務家(法律事務所)との共同で立ち上げた。申請者は、研究代表者として同研究会を主催するとともに、公開買付けによる企業買収スキームの一環として行われる非公開化取引の条件およびそれが公開買付けの成否に与える影響(ことに、いわゆる「強圧性」の有無およびその程度)を中心に、実証的な研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のとおり、非公開化取引の局面における株主のオプション的地位の補償の問題について、具体的な研究成果を公表するとともに、上記の研究会を通じ、公開買付けに続くスキームとして行われる非公開化取引に関し、実証的な研究を遂行できているため。
|
今後の研究の推進方策 |
主として「研究実績の概要」に記載した公開買付けに関する研究会を通じて、公開買付けに際して行われる非公開化取引および当該非公開化取引が公開買付けの成否に与える影響を実証的に明らかにするとともに、その研究成果を基礎とし、非公開化取引においてオプション価値を剥奪される少数株主に保障されるべき価値およびその価値を決定する手続のあり方についての考察を進める。研究成果は、個別論文の他、上記研究会の研究成果として出版予定の書籍の形で公表したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の書籍が本年度中に出版されなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
購入予定のの書籍が出版された際の購入費用に充てる。
|