諫早湾干拓事業によって造成された潮受堤防の排水門の開門の是非をめぐる裁判において、5年という期間を区切って開門を認めた判決が示された。本研究では、まず、期限を区切った差止めの民事実体法的な根拠づけが難しいことを明らかになった。他方、民事手続法的における議論を基礎とした考察から、原告が現在有している差止請求権に基づく現在給付の訴えであっても、将来にわたって現在の状態が続くか否かという不確実性のあるという点で将来給付の訴えと共通点を見出せることから、将来の不確実性を無視することのできない特段の事情のある場合には、一定の期間を区切った差止めを認めることができるとの結論が導かれた。
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