本研究は、当初、平成25年度から平成28年度の4年計画で実施したが、平成29年度に本研究課題に関連する法改正について経済産業省割賦販売小委員会で検討が行われることになり、その議論と並行して、従来からある問題点の検討と、その解決の方向について引き続き検討を進めた。 以上の検討の中で、近時、重要な課題とされていた加盟店または決済代行業者による不正問題とその対応策について論文にまとめた。これによる結論としては、①加盟店の不正に対しては、イシュアーによるチャージバックが大きな防止機能を有すること、②わが国では、他の国と比べ、クレジット・カードのチャージバックが機能していないこと、③わが国独自のチャージバックを国際的な水準の内容としなければ、わが国のイシュアーが発行するカードが国際的な加盟店不正のターゲットとなってしまうこと、を指摘した。この論文は、「クレジット・カードのチャージバックに関する覚書」『加藤雅信先生古稀記念論文集』(信山社)として発行された。 平成29年割賦販売法改正との関係では、以下の点が指摘できる。平成29年の改正は割賦販売小委員会の議論に基づき行われ、アクワイアラアや決裁代行業者の位置づけを明確にし、一定の行為義務を課すなどの規制がなされたものの、割賦販売法がいわゆる業法であることもあり、行政規制が中心である。行政規制の実施により、一定の効果が期待できるものの、依然としてクレジット・カードの不正使用額が巨額であることに鑑みれば、行政規制に加えて、民事規制を有効に組み合わせることが有効だと指摘できる。この手段として、イシュアーによるチャージバックが極めて有効に機能すると考えられる。
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