最終年度においては、投資会社によるアクティビズムの文脈で投資会社法の行為規制の意義について研究を行った。米国においては1990年代初頭にミューチュアルファンドが投資先企業の経営改革への関与に消極的である要因を巡り議論が行われ、投資会社法の行為規制が障害になっているとの指摘がなされるようになった。そこで投資会社によるアクティビズム促進のための投資会社法改革論が提唱されるようになった。本研究ではこれらの改革論について検討を行った。具体的には、1.ギルソンとクラークマンによるMSIC制度の導入構想および連邦議会における同制度導入の是非を巡る審議内容、並びにSECによるMSIC制度の承認、2.1996年投資会社法改正による適格購入者概念の導入の経緯とその後のヘッジファンド・アクティビズムの展開およびヘッジファンドアクティビズムの評価を巡る議論の展開、3.パルミタによる投資会社法改革論および2003年投資会社法規則改正による投資会社に対する議決権行使の手続・方針および議決権行使結果の開示制度の導入について、歴史的経緯を順に追いながら検討を行った。それにより投資会社によるアクティビズムが盛んになっていった経緯を明らかにすることができた。 研究期間全体を通じて明らかにできたことは、投資会社法の行為規制は投資会社に参加する一般投資家の利益を保護するために導入され、現在でもその役割を十分に果たしているという点である。ただし、投資会社法の行為規制を形式的に適用したのでは投資会社の効率的な運用を妨げ、投資家に不利益を及ぼすことになる。そこで、SECは規則制定により独立取締役による監督機能等を行い、それと引き換えに投資会社法の行為規制を緩和している。このような方法を投資会社法制定以降、今日まで繰り返し継続することによりルールが形成され、米国資本市場法制を支えているものと思われる。
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