本研究は会社法で規定される内部統制構築義務が非営利法人(社団法人、財団法人)に関する法律にも同様の規定が整備されていることについて、その構築状況の違いを調査し組織構造から生じる問題の改善などの提案を試みるものである。本研究は3年計画であり、最終年度では、データのとりまとめと公表を予定していた。また、研究途中で検討の重要性が明らかになってきた、そもそも非営利法人では出資者が不在であり、法人が理事等の任務懈怠や不正行為によって無資力になった場合に適切な責任追及の動機を持つものがいないため、無資力となった後の手当てが不十分である点について検討することとした。 前者については、昨年度行ったアンケートの結果をまとめ、まずは全体的なデータを論文(長畑 周史=大澤正俊「非営利法人の内部統制構築状況に関する調査と分析」横浜市立大学論叢社会科学系列 67巻1・2号135頁)として公表した。結果としては、当初の予想よりも内部統制構築はされているが、法人規模に限らず、発生確率が低いが発生すると致命的となるリスクについての対応が不十分であることが明らかになった。さらに、別稿(長畑周史「非営利法人の業種・規模別内部統制構築度の分析」横浜市立大学論叢社会科学系列において公表予定)にて、比較可能なものについて、規模、業種に分けて、内部統制の構築度が全体の平均値との検定を行い、規模と業種によって異なる構築度を明らかにした。 また、後者の問題については、理事等の規律付けを確保するために、責任追及の主体として、当該非営利法人から利益を受けている者を検討し、それらの者(具体的には、多額の寄付者、サービスの享受者等)に代表訴訟の提起権を付与する可能性や信託を参考とすべき可能性について検討を行い成果を公表した(長畑周史「非営利法人における利害関係者の利益と責任追及の動機不均衡」法学研究 89巻1号267頁)。
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