研究課題/領域番号 |
25380116
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
勅使川原 和彦 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90257189)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 債権法改正 / 債権者代位 / 訴訟担当 / 固有適格 |
研究実績の概要 |
債権法改正のトピックを手続法的に検証する第二段階として,昨年度の「将来債権譲渡」に引き続き,「債権者代位権」における改正をとりあげ,先年公表された「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」に基づき,債権者代位訴訟の原告適格について,手続法理論的な受容可能性について,検討を行った。 債権者代位訴訟については,債権者代位権の行使に着手し債務者がその権利行使を了知したときは債務者は被代位権利の処分権限を喪うとされていた大審院判例の考え方を棄て,債権者による代位訴訟の提起と訴訟告知によっては,債務者が自己に属する被代位債権の処分権限を喪わず,ひいては被代位債権を訴求する場合の原告適格も喪われない,とする大転換が図られている。従前,訴訟法の通説的見解は,債権者代位訴訟の債権者の原告適格は,訴訟追行権が債務者から債権者へ移転するものと考え一種の「法定訴訟担当」として認められるものと解しており,債権者の「固有適格」であるとする構成は少数説にとどまっていた。従前の「固有適格」構成説に,通説側から加えられていた批判の一つが,債権者と債務者が併行して当事者適格を有すると考えることであった。しかし,今次改正に依れば,通説側こそが,再考を迫られるものとなりうる。 この問題は,債権法改正じたいが手続法的に受容できるかではなく,債権法改正を前提に,その受容のために手続法の側が理論構成の変容を迫られる,あるいは,従前の理論構成の「穴」が問われ改めて新たな理論構築が要請されているもの,とも考えられる。私の検討としては,実体法上当然に訴訟追行が授権されている(から法定訴訟担当とみられる)という構成を捨てて,実体法上の授権と併せ訴訟告知をすることによって債権者の原告適格が認められ,債務者に不利にも判決効が拡張される,という理論構成を採るべきことを提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
債権者代位権についての大きな改正は,訴訟法上の視点としては,当事者適格のみならず,「参加」制度等の変容も迫られるものであるが,他人に帰属する請求権を訴訟上行使する際の当事者適格の法律構成については,「権利能力なき社団」と共通する問題性を有し,近時注目すべき最高裁判例も出ていることから,問題の共通性と解釈論の広がりを重視して,「当事者適格」に焦点を合わせた。 おそらくは,債権法改正後の債権者代位訴訟と,権利能力なき社団による社団構成員の総有に属する財産権の訴求とを,並列的に検討したものはほぼ初めてであり,一定の意義はあったかと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
債権法改正のいくつかのトピックを採り上げ,訴訟法理論上・訴訟手続実務上の受容可能性を検討する第三弾として,「債権者取消権(詐害行為取消権)」を扱う。我が国では,倒産法上の否認権との関係が問題の一つとされているところでもある。 ドイツでは民法ではなく,「倒産手続外での債務者の法的行為の取消しに関する法律」(Anfechtungsgesetz)に規律されており,我が国と異なり取消しの効果が取消権者のためにのみ生じるものとされている。ドイツ法上の理論的・実務的取扱いを文献だけでなくドイツ人実務家へのインタビューなどを含めながら,比較法的にも検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
洋書購入における為替の変動により僅かながら金額差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
194円という少額であるので,平成27年度において,同年度交付金と併せ,適切に支出する。
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