現在進行中の債権法改正について,その手続法理論的な受容可能性と実務的に法改正を強いられるか否かという観点から検討を行い,まず「将来債権譲渡」について、とくに「債権譲渡担保」を念頭に置きながら、執行手続・倒産手続において手続開始後に発生する債権について,管財人等は「契約上の地位の継承者」とみるほかないと結論づけた。もとより,債権法改正試案が,倒産法の理論の変容を狙っていた訳ではないと説明されるが,本研究が,倒産手続において管財人にも民法(改正債権法)と同じ規律を持ち込むにはさらなる特別な立法が必要とした点は,その後の改正の議論にも一定の影響を与えたものと考えている。 次に,債権者代位訴訟について,改正前の債務者が当事者適格を喪失した上で法定訴訟担当として判決効の拡張を受けるとされていたのを,改正法案が大きく変更し,債務者は当事者適格を喪失せず,また判決効の拡張を受けるためには訴訟告知が必要とされている点について,訴訟法側の理論変更は不可避であるが,受容できないものではないと結論した。他人に帰属する権利を訴訟上行使することができる当事者適格と,他人に自己に帰属する権利を訴訟上行使された者にも当該訴訟においてなされた判決の効力が及ぶ(生じる)とする場合の理論構成は,権利能力なき社団に給付訴訟の当事者適格を認め,その判決の効力が社団の構成員に及ぶとされた最高裁判決(平成26年2月27日民集68巻2号192頁)の理論構成を考える際にも通底する基礎的考察であった。 第三に,「債権者取消権と債権者取消訴訟」に関し,債権法改正により訴訟告知を要件とされた債権者取消訴訟の判決効を検討しているところであるが,三年を経過しても未だに法案が国会を通過しておらず,願わくば法案の成立・公布後,最初の裁判例に接して研究を継続したい。
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