研究課題/領域番号 |
25380117
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
棚村 政行 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (40171821)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 面会交流 / 養育計画 / 子の監護 / 養育制度支援 / 面会子交流支援 / 離婚後の親権・監護 |
研究概要 |
本研究は、早稲田大学法学学術院棚村研究室を事務局として、平成25年5月から、自治体関係者、研究者、弁護士、元裁判官、元調査官ら15名での面会交流や養育支援制度を調査研究する「養育支援制度等研究会」を設置し、共同の調査研究を開始した。本研究では、FPICなどの民間の面会交流支団体の設置形態、活動の実績、担い手の資格、財政等の実情について、FPICの面会交流支援担当の常任理事からのヒヤリングを実施した。また、東京都のひとり親家庭支援センターはあとの担当課長や相談員からも、支援の実情や課題についてヒヤリングを行った。さらに、厚生労働省からも、担当課長に来ていただき、母子自立支援事業と面会交流支援についての事業概要についてお話を聞いた。その結果、平成26年1月25日に、早稲田大学において「家族ヘ支援を考える」というシンポジウムを実施し、面会交流や養育費の取決めや履行確保をめぐる当事者支援制度における自治体・民間機関・裁判所の役割分担と連携の実情と課題について取り上げた。その成果にもとづいて、世田谷区、文京区、横浜市、明石市などの自治体での面会交流などの当事者支援のあり方について、区長、市長や担当者との面談や意見交換を実施し、平成26年2月に、明石市が「こどもの養育に関する支援ねーとワーク」という取り組みを実施し、同年4月からは離婚届で用紙とともに、こどもの養育に関する合意書やリーフレットの配布、弁護士・臨床心理士・社会福祉士等による相談体制の充実、市の担当者・児童相談所・弁護士会・法テラス・家庭裁判所との連絡協議会の設置などの注目すべき活動を開始した。本研究での提言に基づき、明石市のみならず、大津市、岡山市、名古屋市等が面会交流支援の具体的な検討に入っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は協議離婚が9割近くを占める日本での実効的な面会交流支援制度を構築し、具体的に提案していくために、自治体での取組の現状を把握し、民間機関の支援の実情や活動状況を把握したうえで、関係機関の役割分担と連携の在り方を探ることを目標にした。その結果、自治体の取り組みはほとんど進んでおらず、関係機関の連携も不十分であることが明らかになった。民間の面会交流支援団体の調査を行ったが、専門性や組織の安定性・継続性とうでもさまざまの課題があることが明らかとなり、明石市がこれらの課題を踏まえて、面会交流支援も含めた、自治体初の離婚に伴う「こども養育支援ネットワーク」という取り組みを平成26年2~4月に実施する運びとなり、本研究が明石市の成果をリードした。今後、他の自治体にこのような身近な自治体と関係機関の取組をひろげてゆきたいと思う。
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今後の研究の推進方策 |
すでに述べたように、本研究では、日弁連の家族法制委員会や両性の平等委員会、最高裁判所家庭局や東京家庭裁判所、法テラスだけでなく、岡山市、千葉市、名古屋市、横浜市、さいたま市など全国の自治体や関係機関に、民法766条の運用の改善や当事者支援策を具体的に提案して、その支援の実施の効果や支援ニーズに応じた新たな支援策を検討してゆきたいと思う。とくに、面会交流支援の取り組みでは、韓国、台湾、シンガポール、香港などアジア近隣諸国での取組みに工夫と努力が見られるため、そのような取組の実情を調査研究するとともに、欧米諸国での面会交流支援制度の実情や先駆的な取り組みを調査したうえで、平成26年7月、同年11月、平成27年1月に、実務家、研究者、自治体、法務省、裁判所、厚労省等の関係機関の連携に焦点を当てたシンポジウムを開催し、さらに支援制度の充実を図りたいと考えている。
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