平成27年度は、本研究の最終年度にあたるため、まとめとしての研究論文を作成することを心がけた。そのため「家事事件手続法の意義と課題」と題する論文を完成させた。これは『講座家事事件手続法』(日本加除出版)に収録され、現在出版待ちである。他に、2015年6月に「家事事件手続法の理論と今後の理論的課題」が新・アジア家族法三国会議編『家事事件処理手続の改革』(日本加除出版)に収録されて公刊された。また、現在『家事事件手続補(第3版)』(有斐閣)が校正段階にある。また小さなものではあるが、2015年11月発行の民事訴訟法判例百選(第5版)に「訴訟と非訟ー夫婦同居審判」を書いている。 上記の今年度の成果を比較法研究の拠点としたドイツの大学の民事訴訟法研究所で報告して所属の教授の意見を伺うことにした。当初はフライブルク大学民事訴訟法研究所を予定していたが、都合により、2016年3月にハイデルベルク大学民事訴訟法研究所を訪ね、ケルン教授を相手に日本の状況報告をした。その結果、ドイツの立法を見ながらの家事事件手続法の制定であったが、両者の重要な立法趣旨である手続保障については、規定に落とし込んでその明確化を図ったドイツと比較して、日本は裁判所の裁量に委ねられる部分を多く残していることが浮き彫りになった。これをどのように評価するかが問題となる。家事事件手続法の施行後3年を経過しているが、家事事件手続が非訟事件として非公開で審理が行われることもあって、その実態を把握するのに今少し時間がかかる。新法施行後にこの手続を使った当事者の実態調査を含めその評価を今後の課題としたい。なお、現在、学習院大学で行われている家事事件手続法の研究会(稲田龍樹教授主催)に加わっている。2016年度中にはその成果物である「離婚調停と子の監護に関する処分調停のあり方」(コメント)を完成させるつもりでいる。
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