研究課題/領域番号 |
25380123
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
秋山 靖浩 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10298094)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 定期建物賃貸借 / 定期借家 / 空き家 |
研究概要 |
本年度の研究目的は、定期建物賃貸借が十分に活用されていない法制度上の要因を分析するために、日本法を対象として、定期建物賃貸借の「締結」および「終了」の局面における法律上の問題点を明らかにすることに置いた。これは、締結時および終了時に法律上の問題点が存在すると、当事者が定期建物賃貸借を選択することを妨げる方向に働くのではないかと考えられるからである。そこで、以上の目的に基づき、定期建物賃貸借に関する近時の文献および裁判例を手がかりとして、定期建物賃貸借の「締結」および「終了」における法律上の問題点を具体的に探った。その結果、主に次の点が明らかとなった。 第一に、「締結」の局面では、定期建物賃貸借の成立要件とされている、契約締結に先立って書面を交付して行われる説明(借地借家法38条2項)に関して、複数の論点が生じていることが明らかとなった。これらの論点の中には、下級審裁判所の判断が示されているのみで、学説においても見解が定まっておらず、まだ決着がついていないものも含まれている。また、最高裁の判断が示された論点もあるが、この最高裁の判断に対しては一部業界からの反発も出されているため、今後の議論がなお流動的な側面も残っている。 第二に、「終了」の局面では、締結の局面に比べると議論が少ないものの、いくつかの論点が顕在化しつつあることが明らかとなった。例えば、定期建物賃貸借の期間が1年以上の場合には、建物の賃貸人は、期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃借人に対して期間満了により契約が終了する旨の通知をしなければならないというルール(借地借家法38条4項)をめぐる論点である。 以上によると、定期建物賃貸借の締結・終了については、法的に不安定な状況が続いているとの分析が成り立ちうるように思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、定期建物賃貸借の「締結」および「終了」の局面における法律上の問題点を探るために、(1)日本法に関する文献および判例を調査することに加えて、(2)平成26年度以降に実施する予定の日本法における実態把握のための聞き取り調査に向けて、関係の業界・団体とコンタクトをとること、(3)ドイツ法におけるZeitmieteに関する文献および判例の調査に着手することを計画していた。このうち、(1)については、文献・判例の収集は順調に進んでおり、その分析も適宜行っている。また、(3)についても、文献・判例の調査に着手した。これに対して、(2)の作業には着手することができなかったことから、現在までの達成度を「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度中に予定していた、定期建物賃貸借の「締結」および「終了」の局面における法律上の問題点を探るための関係業界・団体とのコンタクトについては、なるべく早い時期に着手する。その上で、これらの業界・団体への聞き取り調査を通じて、法律上の問題点の背後にある社会的背景等を探る。 以上と並行して、平成26年度には、定期建物賃貸借の「締結」および「終了」の局面における日本法上の問題点の分析を深化させるとともに、ドイツ法におけるZeitmieteに関する調査・分析に本格的に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
定期建物賃貸借に関する日本法の議論はあまり進んでおらず、文献も少ないため、文献資料の購入費用が低額にとどまったこと、および、Zeitmieteに関するドイツ法の文献の調査については、今年度は、手元にある体系書・注釈書を中心として進めたため、文献資料の購入がなかったこと、などがその理由である。 Zeitmieteに関するドイツ法の調査に本格的に着手するため、この分野に関する研究書等の文献資料の購入に主に使用する予定である。
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