本年度は、(1)平成27年度における現地調査によって明らかとなった、ドイツ・ライプチヒの「守り人の家Waechterhaus」プロジェクト、すなわち、《市街地中心部の空き家をそのまま放置しておくのではなく、希望者に格安で貸し出し、借主が芸術活動などの活動を行うことによってその空き家の価値を高め、いずれは市場家賃で貸し出せる住宅として再生するというプロジェクト》について、その詳しい内容を調査するとともに、(2)このようなプロジェクトが空き家問題の解決にどのようなインパクトをもたらしうるかを検討した。 (1)については、この取組みがハウスハルテン協会によって行われていること、空き家の所有者と同協会との間で使用協定を締結した上で、同協会は一定期間(約5年間)、賃料なしで物件の使用希望者にその建物を提供すること、使用者(家守)は、各自の目的に沿って建物を改修して使用すること(芸術・文化イベントの開催場所として使用されることも多い)、使用者には期間終了後の原状回復義務はないこと、建物所有者は建物の修繕等の負担から解放されること、若者や芸術家が集まることによって近隣に好影響を与え、地区の魅力を高めていること、などが明らかになった。 以上からは、(2)について、①非営利活動団体等が介入して空き家の所有者と借り手とを結びつける仕組みが有用であること、②空き家の活用に当たっては、空き家所有者の修繕等の負担をどのように軽減するかが重要であること、③空き家の売買や賃貸がうまく進まないまま放置されるよりは、暫定的な形でも利用されたほうが望ましいこと、などの有益な知見が得られた。 これらの点は、平成27年度までに得られた知見とも重なる部分が多い。つまり、上記①~③のような観点を踏まえた各種の取組みを用意してはじめて、定期建物賃貸借の制度は空き家問題の実効的な解決につながっていくものと思われる。
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