研究課題/領域番号 |
25380125
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
舩津 浩司 同志社大学, 法学部, 准教授 (80454479)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 民事法学 |
研究実績の概要 |
当年度は、EU・ドイツ・イタリアの企業グループ法制にかかる近時の動向と、その論議が日本法に与える示唆について研究し、それを論文の形で公表した(フィナンシャルレビュー121号所掲の論文参照)。すなわち、子会社少数株主保護という伝統的な課題設定ではなく、近時の欧州における優勢的な考え方である、親会社や企業グループの活動を優先する考え方について、その背景にある基本思想の変化をもたらした要素を明らかにすることを通じて、わが国における(とりわけ運営の局面に係る)企業グループ法制に関する従来の見解を再定位し、また、今後の議論の進め方に関する留意点を提示した。具体的には、欧州における議論の変化は、多分に政治的要素の影響が強く、その議論の理論的当否については慎重に検討する必要があることを指摘するとともに、欧州においても企業グループ内取引の適正性を担保する制度には様々な考え方があることから、わが国における法制を検討するうえでも、従来優勢であったように、企業グループ内取引の特殊性を強調したうえで「子会社が独立の会社であると仮定した場合にどのような取引を行うか」といった仮定的なベンチマークを設定するのではなく、むしろ、損害確定や損益相殺の枠組みとった一般的私法上の概念と整合的な考え方に照らした取引の「公正性」といったものを観念する必要性を指摘した。また別の実務家向け雑誌の論文(ビジネス法務14巻9号所掲)においては、よりわかりやすい設例を用いて、企業グループ内取引の特殊性を過度に強調する考え方に対する批判的考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時間の関係上、予定していた海外調査は行えなかったものの、国内において入手可能な文献を参照して欧州の議論の整理を行い、それを成果として公表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に予定していた海外調査、特に企業グループの会社法的規律について、一般民事法的観点から見た場合の特殊性の有無について引き続き検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
時間的関係から、研究遂行の順序を入れ替え、海外調査を平成27年度以降に計画を変更したため、主として海外調査旅費の部分が未使用となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度において、海外調査を実施する予定である。
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