研究課題/領域番号 |
25380131
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 いつ子 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (00262139)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 憲法 / インターネット / 検索エンジン / 忘れられる権利 / プライバシー / 個人データ / 情報公開 / メディアの自由 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画調書に記した本研究の3つの軸のうちの1つ目と2つ目の軸に力点を置いて基盤的なリサーチを行った結果、主な研究成果として、以下の2つが挙げられる。 第1に、スマート情報環境におけるプライバシー保護とメディアの権力チェック機能のあり方について、(1)国家がグローバルな規模において不可視な形で行う個人データのサーベイランスに対しては、「実効的かつ国境を越えたチェック」が喫緊に求められる中で、(2)しばしば対立的に捉えられるオープンガバメントとプライバシーという概念は、情報という観点から見れば密接な関係にあるとともに、(3)ときに脆弱と批判される日本の個人情報保護制度の中でも、公的部門での開示請求に関する仕組みが、上記の権力チェックのための道具となる未開拓の可能性を持つこと、等を指摘した(後掲の研究発表欄の「The Checking Value in “Information Privacy” Concept」等を参照)。 第2に、ネット上での「忘れられる権利」をめぐって、2014年のEU司法裁判所先決裁定では、(1)いかなる判断基準と根拠に基づいて、①EU個人データ保護指令がアメリカに所在地がある検索エンジン事業者に対して適用される上に、②合法的に公表された情報までも検索エンジン事業者が削除を義務づけられるとされたのかを、この事件の法務官意見と比較しながら明らかにするとともに、(2)その後のEU個人データ保護規則案に関する動向や検索エンジン事業者による対応策についても分析を加えることを通じて、こうしたEU法の下での個人データ保護とその対抗利益間の「公正なバランス」の実現に向けた試行錯誤が日本法に持ちうる示唆を探った(後掲の研究発表欄の「EU法における『忘れられる権利』と検索エンジン事業者の個人データ削除義務」を参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、第1に、研究計画調書の予定どおり、基盤的なリサーチ・日本語での論文執筆および成果発表・英語による国際学会での口頭発表等について順調に実施できたことに加えて、第2に、研究計画調書では平成27年度に予定していた、本研究の中間成果物のコンセプトの大枠を英語でまとめて関係研究者・実務者等からレビューを受ける作業についても、(1)オスロ大学で開催された国際憲法学会世界大会のウェブページに英語論文が掲載された(後掲の研究発表欄のウェブページを参照)上に、(2)国際的な憲法学のジャーナル(PERCORSI COSTITUTIONALI)の創刊号に英語論文が掲載されたことによって、予想以上に数多くの国々の関連分野の研究者・実務者等から本研究への高い評価や有益なアドバイスを得ることができたため、本研究は当初計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、研究期間前半にあたる平成25年度・26年度とも当初計画以上に進展しているとともに、研究遂行上の支障は生じていないことから、研究期間の後半においても、研究計画調書に記した目的と方法等の下で着実に研究を進めていくこととしたい。
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