研究課題/領域番号 |
25380132
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
成原 慧 東京大学, 大学院情報学環, 助教 (40647715)
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研究分担者 |
渡邊 智暁 国際大学, グローバル・コミュニケーション・センター, 准教授 (60535988)
生貝 直人 東京大学, 大学院情報学環, 特任講師 (70468528)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 規制 / 情報社会 / アーキテクチャ / 媒介者 / 忘れられる権利 / インターネット中立性 / オープンデータ / 著作権 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、情報社会において主体と作用の両面において重層化の進む規制のあり方について、各種の規制の背景、歴史、概念、構造について検討し、情報社会において重層的な規制手法が有する法的課題を明らかにした上で、情報社会における重層的な規制を統御する制度のモデルを提示することである。そのために本年度は、情報社会において重層的な規制の鍵となる情報流通の媒介者の役割と責任について比較法的に研究した上で、プラバシー、著作権、インターネット中立性に関する問題を対象に規制の重層化が提起する問題とその統御のあり方について検討した。(1)情報流通の媒介者の役割と責任については、インターネット上の情報流通において各種の媒介者が人々の表現の自由等の実現に貢献しているという役割に鑑みると、媒介者に対する規制は利用者の表現の自由等を不透明な形で広汎に制約してしまうリスクを有しているなど問題が大きく、慎重な対応が必要であり、立法・司法・媒介者の取り組みにより媒介者規制の適正化・透明化を進めていくことが求められるとの結論が示された。(2)プライバシーについては、パーソナルデータや忘れられる権利に関するEUと米国の議論を検討することにより、サイバー・セキュリティとの関係も意識しつつ、わが国におけるプライバシー分野の重層的規制の制度設計の枠組みを提示した。(3)著作権については、オープンデータやデジタル・アーカイブに関する欧米の法制度を検討することを通じて、データの利活用と保存を推進するための規制政策についての研究を行った。(4)インターネット中立性については、ペンシルバニア大ロースクールのC. Yoo教授を招いた講演と討論を行った。講演と討論では、より広い政策目標(投資、安価な供給、利用の普及)を視野に入れた政策決定の重要性が強調され、中立性の追求が部分最適解に留まる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、情報社会において重層的な規制の鍵となる媒介者の役割と責任について整理した上で、プラバシー、著作権、インターネット中立性に関する問題を対象に規制の重層化が提起する問題とその統御のあり方を明らかにすることにより、情報社会において重層的な規制手法が有する法的課題とその規律手法を明らかにするという本年度の目的をおおむね達成することができた。本年度の研究成果は、本研究課題の最終年度にあたる次年度において重層的な規制を統御する制度のモデルを提示する上での前提条件を示したものであると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度にあたる平成27年度は、本年度までの研究成果を踏まえ、情報社会における重層的な規制の統御のあり方を法学、政治過程論、規範理論の観点から検討し、重層的な規制を統御する制度のモデルを提示することを試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、研究代表者および研究分担者のスケジュール等の事情により、国際学会等に参加するための海外出張を行うことができなかったため、助成金の一部を次年度使用額として繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、次年度において研究代表者および研究分担者が国際学会参加やインタビュー調査等を行うための海外出張費等として使用する予定である。
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