研究課題/領域番号 |
25380140
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小川 明子 早稲田大学, 総合研究機構, 招聘研究員 (90530593)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 追及権 |
研究実績の概要 |
追及権は、ベルヌ条約第14条の3に規定される著作者の権利である。我が国では未だ導入されておらず、導入に関わる検討についても進展していない状況であるものの、世界に目を向ければ、2014年度現在79カ国以上に追及権制度が存在する。 本研究においては、将来我が国での導入を視野にいれた上で、どのような追及権制度の導入が望ましいかといった観点からの研究を行うことを目的とする。初年度においてはアメリカ連邦議会に提出された追及権法案を中心に検討を行った。二年目である2014年度には、欧州指令の影響についての調査報告書の内容について検討を行った。すなわち、追及権に関わる欧州指令2001/84/ECによって欧州連合加盟国が追及権導入に批准した後には、定期的に市場への影響等について調査報告を行うことになっていることから、2011年度報告書及び最近の欧州司法裁判所における裁判例について論文を執筆した。 また、8月には早稲田大学知的財産法制研究所主催第37回研究会において、10月には日本知財学会 知財会計・経営分科会において、11月にはCISAC Asia Pacific Conference において、そして、12月にはデザイン利活用による地域貢献ネットワークにおいて、それぞれ、追及権に関わる講演を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、初年度に欧州各国法における追及権の実態を調査検討した後に、次年度以降に豪州等への影響といった観点からの分析を行うことを予定し、同時にアメリカの状況についても注視することとしていた。しかし、初年度には、アメリカでの法案の提出とアメリカ著作権局による報告書の提出といった進展があったために、そちらを優先し論文を執筆した。(「比較法学」48-2に掲載)2014年度は、欧州において提出された2011年報告書及び本報告書で求められた美術関係者会議(2014年2月に署名)についての分析を行った。加えて、2014年イギリス知財局による調査報告および2015年2月の欧州司法裁判所C-41/14についても検討した論文については、2015年12月発行予定の紀要への掲載が決定している。(「比較法学」49-2に掲載予定)
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今後の研究の推進方策 |
2015年度には、豪州を中心とした検討を行う事を予定している。豪州は、2009年に追及権制度を導入しているが、憲法と抵触する可能性があるとして、追及権制度が導入された時点で保有している原作品の所有者については、1回目の転売を除外して2回目から追及権の対象とするとしている。このような規定をもとに導入後、果たして如何なる影響がでているかについて分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度は、当初オーストラリア訪問を予定していたが、2013年度にアメリカに関する調査を行った関係から、2014年度は欧州における状況について、欧州報告書及び判例研究を中心とした検討を行っている。2015年度に豪州研究を進めたいと考える。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度には、今回の残高と合わせて、本研究の総括として豪州への出張、および、海外からの学者の招聘等にあてることを予定している。
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