研究課題/領域番号 |
25380144
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
犬塚 元 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30313224)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 王党主義 / 君主主義 / 文明社会論 / イギリス(イングランド) / 啓蒙 / クラレンドン伯ハイド / ヒューム |
研究概要 |
1 本年度(2013年度)は,まず,17世紀復古期イングランドの王党派であるE.ハイド,P.ワーイック,R.シェリンガムの政治思想について調査を行い,王政崩壊や内乱の後にあらためて王政を正当化した彼らの言説の特質を分析した。そのうえで,彼らのそうした言説を受容史の観点から整理するために,18世紀啓蒙期に及ぼした影響についてD.ヒュームの『イングランド史』を分析素材にして検討を行い,その成果を論文「「文明化された君主政」論の王党派的起源──フィリップ・ウォリック,エドワード・ハイド,デイヴィッド・ヒューム」としてまとめた(2014年度に刊行予定)。 この調査の知見は,18世紀啓蒙研究にも影響を及ぼすことになった。その一端は,2014年度に刊行予定の編著『岩波講座 政治哲学2』(およびそこに収録した「序論」「歴史叙述の政治思想」)に反映することができた。 2 王党主義・君主主義にフォーカスする本研究課題は,ひろく,西洋政治思想史研究のリヴィジョニズムと関連・連動している。そのために,研究初年度にあたる本年度は,幅広く,西洋政治思想史研究のリヴィジョニズムの成果を摂取することにも努めた。(1)本研究課題にも密接に関連する内容をもつ,J.ポーコック『島々の発見──新しいブリテン史と政治思想』を監訳者として本年度内に公刊することができた。(2)本研究課題が主に分析する17-18世紀に限られない,最新の研究知見に通暁するために,16世紀,19世紀,20世紀を専門とする若手・中堅の政治思想史研究者を招聘して研究会を組織して意見交換を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の申請書のとおりに,2013年度はE.ハイドの分析が中心となったが,調査の過程では部分的に,第二年度(2014年度)に「復古王政期における王党派の君主政論の多様性や共通性を明らかにするために」分析を予定していたP.ワーイックやR.シェリンガムのテクスト(Robert Sheringham, The Kings Supremacy Asserted, 1660 ; Philip Warwick, A Discourse of Government, 1678 )の分析にまで踏み込むことになった。調査・分析,および研究成果の公開という点で,おおむね当初の予定通りに進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
第一には,研究申請書の第二ヶ年次計画に記したとおり,復古王政期の王党主義を<それ以前の君主主義政治思想の継受>という観点から位置づける作業を通じて,分析を拡張する。本研究課題では,王党主義政治思想における穏和君主政論や君主政発展論に注目しているが,前者の契機についてはボダンやフィルマー,後者の契機についてはジェイムズ6/1世(あるいは同時代のボシュエ)にも近似の思想を見出すことも可能だからである。 第二には,これとは反対に,<復古王政期王党主義の受容史>という研究アプローチの妥当性や生産性について第一ヶ年度の調査によって一定の目算が付いたので,引き続き,ヒュームの『イングランド史』を始めとする,18世紀の歴史叙述の政治思想との連続性に留意して研究をすすめる。『ルイ14世紀の時代』などのヴォルテールの歴史叙述にみられる君主主義(いわゆる王のテーゼ)など,イングランドやブリテンに限られない西ヨーロッパ圏の君主主義・王党主義との関連にも注目する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 この次年度使用額は,2014年度請求額とあわせて,2014年度の研究遂行に使用する予定である。
|