研究課題
本研究は、「18世紀啓蒙の文明社会論の思想的起源のひとつは、17世紀の王党主義・君主主義の政治思想であった」という命題について、デイヴィッド・ヒュームの「文明化された君主政civilized monarchy」論の思想的淵源を解明する分析を出発点にして、その妥当性と適用範囲を検証してきた。最終年度である2017年度は、前年度に研究機関を異動したために延期していた海外での資料調査を実施し、とくに、成果の公表や、これまでの分析成果が示唆する発展的内容についての検討に重点を置いた。(1)この研究課題は、王党派や君主主義と分類されてきたテクストが、ヒュームに対して大きな影響を及ぼしており、具体的には、ヒュームの歴史叙述・歴史解釈や君主政解釈は王党主義・君主主義の継承として理解できることを明らかにした。こうした、思想史における系譜をめぐる理解の刷新は、翻って、ヒュームのテクストそのものの理解においても刷新・修正すべき点があることを意味している。そのため2017年度は、その作業の一環として彼のテクストの訳出作業をおこない、おおむね作業を終えて原稿を完成させることができた(2018年度以降に公刊予定)。(2)王党主義・君主主義の思想系譜の重要性を明らかにする作業は、従来の通史叙述、思想史叙述を再検討する作業と連動しており、2016年度に引き続いて、この点からの分析も継続した(『バーク読本』の分担章、論文「歴史の理論家としてのポーコック」はその成果の一端である)。さらに、通史叙述の構築性・時代規定性について検討する延長で、思想史方法論の再検討作業にも着手せざるをえなかった。Social Science Japan Journal掲載の書評や、「データフィケーションの時代における思想・哲学研究」という報告は、そうした検討作業にもとづく成果である。
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思想
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10.1093/ssjj/jyx025
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