平成27年度の前半期には、全体計画の中の第三の課題、すなわち「3.1万歳運動の失敗によって、儒学的国際秩序観は消滅するが、社会主義などに継承をも見えることという仮説を立てて、それを史料に基づいて検証する」という課題に取り込んだ。研究の結果、安東の両班出身でありながら、第2次朝鮮共産党の共青責任秘書を務めるなど、社会主義運動の指導者になった権五ソル(1897-1930)の事例などから、国際関係を含めた全体的な思想の変容過程において、儒学的な思考方法による社会主義への接近が見えることが明らかになった。 後半期においては、これまでの研究成果をまとめて、公表する作業を本格化した。9月に韓国の国立外交院(ソウル市)に行った第4回外交史セミナーでの講演(「朝鮮時代の国際政治思想と当代朝鮮半島:1876-1910年における変容とその思想的遺産を中心に(韓国語)」)、10月に学習院大学で行われた朝鮮史研究会第52回大会での報告(近代朝鮮における「交隣」概念)、そして、名古屋大学法政論集に投稿した論文(「近代朝鮮半島における政治空間に対する認識の変容:家・郷・国・天下から国内・国際へ」)は、その結果である。
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