研究課題/領域番号 |
25380156
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
瀧口 剛 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10257959)
|
研究分担者 |
田中 仁 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60171790)
森川 正則 奈良大学, 文学部, 講師 (70362598)
村上 友章 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (80463313)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 大阪財界 / 日本政治史 / 政治経済史 |
研究実績の概要 |
当該課題研究の2年目である2014年度は、テーマである「大阪財界の政治経済史」について、各担当者が資料収集を進めると同時に研究会を催して情報・意見を交換し、研究状況の進展を確認した。 明治末期から大正期(第1次世界大戦期)を担当する森川は、中央政府の関税・通商政策および台頭する政党諸勢力との関係・立ち位置に焦点を当てて調査研究を進めた。文献資料調査では、関西圏を中心とした新聞・雑誌および各種の文献史料の調査に力点を置いた。加えて、東京・国立国会図書館の憲政資料室では井上馨など関係する政治家の個人文書の調査を行った。昭和戦前期大阪財界の政治経済史を担当する瀧口は、大阪財界と関係の深い自由通商運動やその指導者である平生釟三郎と戦間期の政治に関する研究を進めた。関連する資料を集め整理する一方で、平生日記を検討する作業を進めた。成果の一部を「満州事変と自由通商運動」などの論文等を発表した。戦後を担当する村上は、高碕達之助を中心に調査研究を行った。特に東洋食品研究所にて高碕達之助関係文書の資料整理および調査を行い、茨木高校では、高碕およびその関係者の関係資料を調査した。また小畑忠良個人文書を発見し調査した。中国とのネットワークを担当する田中は、上海の日本人社会の政治的構造を探求するために、人名録から職業構成のデータベースを構築し、その政治経済的意味を考察する作業を進めた。 研究会による検討は、大阪大学において年4回開催した。特に田中仁ほか「1930年代上海日本人社会の変容―『金風社人名録』1936年版と1939年版の比較から」、上田貴子「山東人雑貨商のネットワークにおける奉天・大阪・上海」の報告は、中国大陸と大阪経済とのネットワークに関する研究成果を確認する貴重な機会であった。 以上、明治期から戦後期の大阪の政治経済史について、資料の収集、検討、考察を着実に進めることが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該課題研究は、政治経済史における大阪財界の役割を中央政府との関係、アジアとの経済的ネットワークなどの調査検討によって明らかにすることを目的とする歴史的研究である。日本政治史研究者がそれぞれ時期区分にしたがい役割分担し、中国政治史研究者が大陸との関係を分担する。 史料に基づく実証を基盤とする本研究においては、期間全体を通じて第1次資料・公刊資料の調査・収集が欠かせない。そこで、最初の2年間では、国内外での資料調査・収集に重点を置いて活動する。その間、研究者各自が収集した史料の分析を逐次進めるとともに、定例研究会を開き意見の交換によって全体像を作ってゆく研究計画をたてた。 研究実績の概要でも記述したように、分担者が担当するそれぞれの時期、テーマに関連する資料の収集と分析は、順調に進んだ。特に、平生日記の分析により自由通商運動と大阪の政治経済の関係があきらかになり、上海の職業構成と政治経済ネットワークの分析は順調にしている。また今年度から村上氏を迎えて、戦後における大阪財界の役割についても研究を進めた。これによって大阪財界出身の高碕達之助関連資料の収集が進み、政党政治と関係の深かった北洋漁業と大阪財界との知られざる関係を明らかにする端緒をつかんだ。また住友財閥出身の小畑忠良の資料を発見し、大阪と中央政界との関係を明らかにする端緒をつかんだ。これらにより大阪財界の政治経済史研究をささえる資料の探求が一層進んだ。 また、計画通り研究会を開催して、大阪財界の政治経済史に関して検討を深めることが出来た。 以上、大阪財界の政治経済史について、メンバーを補強しつつ、資料調査を進展させ、研究会による検討を行い、また一部研究成果の公表をおこなったことにより、順調に本研究が進展していると評価することが出来る。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き補完的な調査を行う一方で、研究の進捗状況に関する情報交換を行いつつ、研究成果のとりまとめ及びその公表を行う。 分担別では、第1期を担当する森川は、明治~大正期の大阪を中心とする政治経済史の補完的資料収集を行い、年度の後半に研究成果の公表を行うよう努力する。第2期を担当する瀧口は、戦間期大阪の政治経済について、自由通商やその指導者の一人である平生釟三郎を中心に実証的研究をさらに進展させ、論文などのかたちで研究成果の公表を行う。戦後期を担当する村上は、高碕達之助、小畑忠良の関係文書の調査分析をさらにすすめる。特に高碕の企業関係資料から、政党政治と関係の深かった北洋漁業と大阪財界との知られざる関係を明らかにしていきたい。 小畑忠良関係文書には、住友本社から企画院次長となり、1940年代の経済新体制を支えたユニークな経歴を持つ政治家・小畑忠良の書簡・日記が含まれている。今後は、まさに大阪財界の政治経済の中心にいた小畑の資料を精査することにより、大阪財界と経済新体制の関係に新たな観点から光を当てていきたい。中国との関係を担当する田中は、上海の人名録から復元した居留民の社会的構成データをもとに、その政治と大阪など日本とのネットワークのあり方について、研究を一層進めその成果を公表する。 これらの分担研究をベースに、ひきつづき大阪大学政治史研究会において、大阪財界の政治経済史に関連するテーマの報告会を行い、進捗状況を確認すると同時に、研究成果の方向性を確認しとりまとめを行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた出張ができなくなったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度に予定していた調査の出張を行う。
|