研究課題/領域番号 |
25380157
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
毎熊 浩一 島根大学, 法文学部, 准教授 (50325031)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 共同募金 / 新しい公共 |
研究実績の概要 |
小職の中長期的な問題関心は、「新しい公共」と呼ばれる(た?)時代・社会文脈における「行政責任」のあり方を解明することにある。「共同募金会」(以下、共募)を主たる題材とした本研究もその一環をなす。今年度の主たる研究内容は以下の通り。 ①「地域をつくる市民を応援する共同募金への転換」(以下、60周年答申)が出されて以降の「改革」を追った。一言すれば、中央共募でも各地でも様々な取り組みがなされてきたが、その実態も改革度も都道府県・市区町村ごとに異なることが判明した。例えば、本研究の主たるターゲットである島根県は比較的“優等生”と言ってよいが、他方で全くコミットしてこなかった県もある。その差異―改革成果の代表的な指標とされる募金額も含め―を説明する要因について考察している。 ②比較という面では、昨年度に引き続きカナダの寄付動向をフォローするとともに、アメリカUnited Way Worldwide等についても概観した。その一つの知見は、助成効果(Social Impact)測定やリスク管理―例えば不祥事への対応―が共募の今後を占う緊要な論点となるということである。 ③「民」の「担い手」に関する先行研究を、それぞれの役割と担い手同士の関係に焦点を当てながら、レビューした。とくに社会福祉協議会や町内会・自治会に関して言えば、それ自体の研究蓄積は豊富であるが、共募との関係についての研究はさほど多くないことが確認された。より歴史的・比較的な視座からのアプローチが求められると言える。 ④「新しい公共」において行政はどうあるべきか。事例研究として島根県をとりあげ、NPO政策において行政の果たした役割、その成果等について検討した。なかでも、協働関連事業と社会貢献基金については、近年、機能不全が見られることもあり―「島根県県民いきいき活動促進委員会」委員としての参与観察も活かしながら―より深く考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究期間3年の2年目であった。一定の絞り込みを企図しつつも、そもそもの研究の射程が広いため、文献にせよ現実動向にせよ、意識的に幅広に―例えば、寄付も一種の投票ないし参加であるとの認識から、地方議会論や政治参加論も―フォローした。先述の通り、一定の成果もあがったと認識している。その意味で「順調」である。 ただし、「おおむね」と言わざるを得ない側面もある。その主な理由は、予定していた二つの調査を延期したことにある。一つは、島根県内の共募関係者(団体)へのアンケート調査。「改革」第1期の終了年度が今年度であったので、それを待つこととした。いま一つは、全国調査。自身のアンケート設計が大詰めの頃、幸か不幸か(?)、中央共募自らが実態調査を行う予定であることを知った。実際それは実施され、年度末には、中央共募のとある委員会のなかで速報値も出されている。必ずしも小職の関心と完全一致するものではないが、興味深い設問や結果も多く含まれている。ひとまずそれを消化することから再出発する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の主な焦点は下記の通りである。以下から得られるすべての知見を統合することが理想ではあるが、それぞれ独立した形ででも――可能なものから――成果をまとめたい。 ①共募「改革」はどこまで進んだのか、団体や地域ごとの差異は何に起因するのか、この問いに答えるため、島根県内および全国を対象に、アンケートやヒアリングを実施する。なお、全国調査については、まずは中央共募による既述の調査結果を十分咀嚼したうえで再設計を行う。ヒアリングは、特徴的なケースを抽出のうえ実施する。 ②カナダをはじめとした諸外国のUnited Wayの動きを追う。とくに、助成先事業の成果をどう把握しているのか、いわゆる社会的インパクト評価の取り組みについて詳しく考察する。けだし、これは、今後の共募ないし寄付全般の進展にとって極めて重要と考えられる論点だからである。 ③「新しい公共」の全体像を鳥瞰すべく、引き続き民の「担い手」全般について、文献および現実動向――全国的にはとくに現政権下の「共助社会づくり懇談会」での議論――を適宜レビューする。また、「寄付=参加」との視座から、あるいは、メタ・ガバナンス論の視点から、政治参加論ないし地方議会論の研究成果もフォローする。 ④寄付も含めた社会貢献が一般的な(と思しき)時代にあって、行政はどうあるべきか。さしあたり、これまで続けてきた島根県の事例研究――今年は「島根県県民いきいき活動促進条例」(=NPO条例)制定からちょうど10年の節目の年である!――をまとめたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
端的に、先述した二つのアンケートを先送りしたことによる。それゆえ、その後に予定していたヒアリング(に必要な旅費等)もさほど使用する必要がなくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
先送りしたアンケートおよびヒアリングを実施する予定である。それに必要な郵送費、謝金(集計など)、旅費などに使われる。
|