研究課題/領域番号 |
25380158
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
福井 秀樹 愛媛大学, 法文学部, 教授 (00304642)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 政策実施 / 戦略的行動 / 公共資源 / 定量的分析 |
研究概要 |
本研究の目的は、(1)政策実施ギャップ(政策の目的と結果の乖離)の発生メカニズムに関する新たな仮説として「政策規定を利用した利害関係者の戦略的行動(政策規定の合法的悪用)」を提案し、(2)米欧日の公共資源(空港発着枠)配分政策の比較分析を通じて、この戦略的行動の有無と効果を定量的に明らかにすることにある。今年度は、予定を変更して米国ではなくEU(とりわけ英国)を対象に、発着枠取引が路線レベルでの競争に及ぼす影響の分析を通じて、「反競争的発着枠取引仮説」の検証を行った。大変興味深いことに、当初の予想とは全く逆に、路線レベルでの競争を高めるのは提携会社間の取引であり、競合会社間の取引は路線レベルでの競争をむしろ弱体化させる、という分析結果が得られた。これはおそらく、競合会社間の相互抑制に由来すると思われる。そして、この相互抑制は、現在の発着枠取引市場が相対取引を中心としているところに一因があるものと推測される。そのため、路線レベル競争を高めるには、相対取引ではない市場スキームの開発が重要だという結論に至った。この研究成果は、ATRS で報告され、現在、Transportation Research Part A にて査読が進行中である(第1次修正版提出済み)。 これに加え、米国航空旅客保護関連規制の効果の定量的分析も行った。航空機が空港搭乗ゲートを離れてから離陸するまでの間に発生しうる極度に長い遅延を防ぐための法律が、航空旅客の利便性向上というその意図に反して航空会社による危険回避のキャンセル増大を招き、結果的に航空旅客の利便性を損なっている推定結果が得られた。この研究成果は ATRS, Kuhmo Nectar, 応用地域学会で報告され、Economics of Transportation での掲載採択となった(ウェブサイトでは2014年3月27日より公開されている)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の順序とは異なるが、発着枠取引データ及び発着枠取引前後の運航データを包括的に用いた定量的分析を実行し、政策規定を合法的に利用した利害関係者の戦略的行動が、政策目的の効果的な実現を阻害していることを解明できた。また、研究成果を、国内外の学会・雑誌で順調に公表・投稿できただけでなく、当初の計画以上の研究(航空旅客保護関連規制の効果の定量的分析)も行うことができた。以上より、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
データの追加収集を行い、引き続き、「非効率的発着枠利用仮説」および「反競争的発着枠取引仮説」の検証を行う。 研究成果は、国内外の学会・雑誌での公表を目指す。 当初の研究計画に含まれていなかった航空旅客保護関連規制の効果の定量的分析も、「政策規定を利用した利害関係者の戦略的行動(政策規定の合法的悪用)」が政策実施ギャップ(政策の目的と結果の乖離)を引き起こす、という本研究の仮説のもとに、引き続き行う予定である。 研究遂行上の問題点は現時点ではない。
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