本研究は,プリンシパル・エージェント理論を準拠しつつ,わが国の地方政府内部の委任監督構造の考察を進めた.特に,地方政府内部での委任内容が一貫性を保ちながら,受任者側の自律性を確保する,という2つの課題をともに実現するための前提条件を明らかにすべく,理論的,実証的な研究を進めてきた. 当該年度は,前年度までに引き続き,実態調査及び研究成果の公開に向け調査研究に基づき,多様な規模の地方政府を対象に次の3種類の研究を進めた. 一つめは,委任と監督の関連資料の収集,資料整理・分析である.過去2年間に引き続き,各自治体の例規集,行政改革資料,行政計画(復興計画)を中心に資料収集と分析を進めた.二つめは,制度運用と具体化の過程に関する調査である.過去2年間の研究実績から,現状把握においては制度一般的に論じるだけではなく,個別実例からの接近が必要と捉え,前年度に引き続き公有財産管理の委任と監督に関する調査を実施した.加えて,健康政策,復興政策を研究対象におき考察を進めた.調査対象は,調査対象への接近の必要性を踏まえて,東京近郊の市区を中心に対象を改め,実施した.三つめは,関連資料・情報等の収集である.公有財産管理における委任と監督制度をはじめとする行財政運営,行政手法等に関する文献収集,資料収集を継続的に実施した. 以上の研究を通じて,平成27年度には,体制整備をめぐる業務の委任と使い分けの実態に関する研究成果を提示することができた.
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