研究課題/領域番号 |
25380162
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
CHARLES Weathers 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50305611)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 労使関係 / 労働運動 / 公共部門 / 労働組合 / 教員 / 保育士 |
研究実績の概要 |
本研究にあたって、本年度は、以下の研究を行った。第一は、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が発刊している雑誌である『日本労働研究雑誌』の第652号、3014年11月号に論文の投稿を行った。論文の題名は「過去の活動家に関心を向け始めた米労働総同盟・産別会議(CIO)――労働者の将来を安定させるために」である。上述した論文では、戦後アメリカにおけるAFL-CIOの労働組合運動について、歴史的事実の把握と考察、そして現在の動向と課題について言及した。 第二は、実態調査である。アメリカの家庭保育ケアワーカーの労働条件とその実態について把握するため、3月に行われたアメリカのオレゴン州での聞き取り調査の情報をまとめて、『経済学雑誌』第115幕第3号、2015年2月号に論文の投稿を行った。上述した論文では、オレゴン州のAFSCME(自治労に当たっている公共部門労働者を代表している組合)の家庭保育士のための活動は保育士の雇用条件及び子どもの世話基準を向上させるかということを描いている。 第三は、2014年10月に行われた社会政策学会(JASPS)の書評分科会における書評である。書評を行った書籍は山田信行著(2014)『社会運動ユニオニズム:グローバル化と労働運動の再生』ミネルヴァ書房である。 また、日本においては、「官製ワーキングプア研究会」への参加とそこでの聞き取り調査を継続的に行っており、公共部門に関する労働問題についても着実に調査の蓄積を行えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究活動、フィールドワークによって以下が明らかになった。 労働政策研究・研修機構へ上梓した論文を執筆していく中で、アメリカの労働組合運動について、改めて先行研究の整理が行えた。そして、論文中で、アメリカの現在の労働運動(前述した社会運動ユニオニズムを含む)と組合活動、日本の労働運動、組合活動の比較を簡潔ながらも行った。明らかなのは、アメリカにおける労働運動と組合活動は、組合組織率の減少や保守的傾向の広まりがありながらも、AFSCMEやSEIUなどで、組織的活動が行われており、労働者達の労働運動と組合活動に対する関心は未だ健在であると言える。 日本の労働運動、組合活動については、連合および大企業の企業別組合レベルでは、「春闘」による賃金、労働条件、生活条件の向上を獲得することは衰えていない。しかし、非正規労働者の増加、低賃金労働、ブラック企業といった社会問題に対して有効な政策要求が行われているとは言いがたい。その点をカバーする労働運動として、ユニオンの活動が注目されている。 アメリカでも日本でもフィールドワークにより公共部門の組合活動の状態を探っている。アメリカでは、保守派の圧力を受け、人数が維持しにくい状態にあるが、家庭保育の雇用条件の改善などの成功がある。日本では、同じように、公共部門の非常勤労働者(官製ワーキングプア)は不安定雇用などを受ける状態にあるが、自治労や自治労連などの活動家のがんばれにより、改善・成功の例も現れている。そのような活動については、フィールドワークを行う中で、その活動内容と今後の展望についてその重要性と将来性を実感しながら、しっかりと調査、研究している。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度においても、日米の公共部門労働問題の比較研究を続ける。 今後の推進方策として、2015年6月に行われる社会政策学会で、アメリカでの公共部門(主に教員と保育士)の組合・政治活動に関する聞き取り調査に基づく報告を行う予定である。また、9月に再度アメリカで聞き取り調査を行う。現在、カンザス州とシカゴ市の教員組合活動について調査する計画を立てている。シカゴ市の教員組合は注目を浴びて、組合活動家のモデルになってきた。カンザス州は、組合活動は注目を浴びていないが、新自由主義の政策は重要な課題になり、組合と市民活動の連携が重要である。 日本では、官製ワーキングプア研究会と公共部門労働問題研究会などの参加を継続する。夏以降、組合の保育士のための活動についての聞き取り調査を行う。また、日本の公共部門労働問題についての英文の情報は殆どないので、英文での報告をまとめて発信する。 両国の事例により、重要な比較研究の成果を算出できるだろう。
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