平成25-27年度は、主に日米の公共部門労働問題と新自由主義の公共部門のサービスに対する影響について取り組んだ。以下は、明らかにしたことの概要である。 日本およびアメリカでは、公共部門の労働者およびサービスが圧力を受けている。アメリカでは、多くの州・地域では、その圧力が2010年ごろ以降かなり激しくなってきた。様々な州では、共和党の保守派の知事の下、税金削減政策が行われ、主に、公教育の予算が打撃を受けている。そのため、教員組合の役割が以前より重要になってきた。4つの州で調査を行った。カリフォルニア州では、教員組合が政治活動を行い、その結果、特別な税金の引き上げを有権者に認めてもらい、公教育の予算問題を大分緩和できた。また、イリノイ州シカゴ市では、教員組合がCharter school推進運動の動きをかなり減速させることができた。しかし、ウィスコンシン州やカンザス州では、教員組合が熱心に運動を行ったにもかかわらず、教員の雇用条件および公教育問題が悪化し続けている。 また、アメリカの家庭保育士の組合も活発に運動しており、オレゴン州やニューヨーク州では、安全基準や雇用条件を大分改善できた。 日本でも、大阪橋下知事、市長の政策により、論文で報告したとおり、組合の状況がかなり弱体化してきた。また、以前から、公共部門の非正規公務員問題が継続しており、主に、女性労働者に対する影響が重大である。現在、安倍政権が女性の社会進出を促進しようとしており、また、保育士の雇用条件の改善が重要な課題になっているが、多くの自治体で働く保育士など非正規公務員の賃金や福利厚生が低くなっている実態がある。高松市の非正規保育士ユニオン(日本最大の非正規保育士労働団体)、福岡市のアマカス男女共同参画センターおよび吹田市の雇い止め反対活動家の調査によりそのような問題を探った。
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