本研究は自民党と民主党について、①政党組織改革の過程、②公認・公募制度、③政策審議機関の分析、④人事制度の分析を進めるものである。なぜなら、1990年代の首相、総裁権限の強化により、首相や官邸を軸とした政策決定への変化が観察され、首相や党執行部への集権化の指摘がある。一方で、首相・党首の交代を意図した党内対立も存在しており、首相‐与党関係の全体像は必ずしも明らかとなっていないからである。そこで、政党組織を構成する政党内制度の分析として、今年度は②、④についての研究を公表する計画となっていた。 ④に関連しては、人事と造反に関するデータベースの構築を進めた。なぜなら、どのような議員が昇進しているのか、造反というリーダーへの反発がどのように人事上の処遇につながっているのかを明らかにするためである。具体的には、1980年から2014年までの新聞記事と議決記録を参照し、各党(会派)、各議員レベルでの造反をデータベース化した。それに基づいて、日本選挙学会で「首相と党内統治」と題する内容を報告し、後に同論文は『選挙研究』で発表された。 分析からは、選挙制度改革後に①主流派優遇人事の増加、②造反の増加、③人事と造反の関係の変化を明らかにした。結果として、1980年代以降の自民党政権下の党内統治のあり方は、人事権を派閥に大きく委ねつつも造反を抑止する状態から、首相への委任が安定的ではないものの、首相及び首相支持グループを軸とした党内統治へと進みつつあることを指摘した。 ただし、②については資料収集と先行研究の検討に止まった。候補者の選考過程・方法がその後の党内統治にいかに影響するのかについては、十分に分析できなかった。
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