研究課題/領域番号 |
25380171
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
大中 一彌 法政大学, 国際文化学部, 教授 (60434180)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フランス / 北アフリカ / 地中海 / グローバル化 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 移民 / 政治思想 |
研究実績の概要 |
研究計画書に記載した移民史研究の古典であるジェラール・ノワリエル『フランスという坩堝』を法政大学出版局から上梓した。この著作は、個別の移民コミュニティのフランス社会への統合と紛争の歴史を描き出すだけでなく、支配的なナショナル・ヒストリーの記述に対して、移民史が認識論上もたらしうる貢献を強調するものである。ただし、その後の増補を経ているものの執筆年代の制約から、1980年代までの事態の展開を念頭において内容となっている。この点を補う目的で、『フランスという坩堝』の認識論上の貢献を、1980年代以降の事態の展開を含めた立場から分析する論文を1本執筆した。また『フランスという坩堝』については、やはり今日における移民問題の観点から、学会セッションが組織され、このセッションの司会を務めた。この学会セッションでは、参加者との討論を通じて有益な知見を得ることができた。なお、本研究課題の立案の段階ではもっぱらアラブの春が視野にあったが、2015年は、フランスでの2度にわたるテロ攻撃が発生し、「ポスト植民地期」の諸課題をめぐる同地での政治的対立は尖鋭の度を増している。その一例として、イスラーム教徒女性が着用するスカーフ(ヒジャブ等と呼称される)をめぐる論争があるが、この主題についても、日本語論文を1本公表した。この論文では、イスラーム教徒女性のエンパワメントという観点と、国家の非宗教性および社会の世俗化という観点の対立の吟味が主な内容となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27(2015)年は、イスラームとフランス共和主義の相克、およびポスト植民地状況(「人種」概念などをめぐる)をめぐる激震の年であった。このことは、海外での研究遂行上の安全確保の問題を引き起こすだけでなく、思想的政治的な水準で、従来の解釈枠組への疑問を多くの人びとが胸に抱き、またそうした疑問が実際に口にされる状況をもたらしている。こうした傾向は、本研究課題の遂行にあたっても、より慎重な取り組みを求めるものである。
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今後の研究の推進方策 |
地中海両岸関係を視野に入れつつ、フランス社会の変動に焦点を当てる形で業績を出してゆきたい。
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