本研究課題においては、ジェラール・ノワリエル『フランスという坩堝』の訳出作業を中心に、国際的な学術情報の交換や人的交流を行なった。ノワリエルの分析は、個別の移民コミュニティのフランス社会への統合や紛争の歴史を描き出すのみならず、支配的なナショナル・ヒストリーの記述に対して、移民史が認識論上もたらしうる貢献を強調するものであった。2015年夏のいわゆる難民危機や、同年11月のパリ同時多発テロ事件は、地中海両岸の関係をめぐる知識人の言説を、少なからず変容させた。多数派・少数派双方のアイデンティティ政治が対立を深めるなかで、本研究では、社会統合を再定礎するあり方について、多角的に考察を加えた。
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