研究課題/領域番号 |
25380177
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研究機関 | 長野大学 |
研究代表者 |
久保木 匡介 長野大学, 環境ツーリズム学部, 准教授 (60434479)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イングランド / 教育水準局 / スコットランド / 学校査察 / 学校自己評価 / アカデミー |
研究実績の概要 |
2014年度は、キャメロン連立政権における教育政策の中でも、特に公設民営学校であるアカデミーの実態にかかる調査研究と、自治体教育部門である地方当局の教育統制機能の変化の調査研究、さらに比較対象であるスコットランドの地方教育当局の調査研究を進めた。 第一に、キャメロン政権において劇的に拡大したアカデミーの実態調査を行った。アカデミーには成績優良校の理事会が自主的にアカデミーに転換するコンバート型アカデミーと、いわゆる失敗校とみなされた学校が強制的にスポンサー付の学校に転換するスポンサー型アカデミーがある。2014年度は、前者の事例であるホカリル・アングロ―ヨーロピアン・カレッジ(スタートフォードシャー県)を訪問し、アカデミー化のねらいや学校運営の実態、教育内容の変化などについてヒアリングを行った。 第二に、地方当局の調査研究では、ブレア政権において民間委託され2013年に直営に戻ったロンドン北部のイズリントン区地方当局においてヒアリングを行った。地方当局が行う学校の業績管理や助言・支援の実態のほか、民間委託時のパフォーマンスの変化などについて調査を行った。 第三に、スコットランドの地方教育当局の調査研究として、エディンバラ市の地方教育当局を訪問し、学校査察へのかかわり方や学校への助言・支援の実態をヒアリングした。 研究成果については、1990年代以降のスコットランドの学校評価システムの変化を論文にまとめたほか、イングランドの教育水準局査察の20年間の展開をまとめる作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初に計画した調査のうち、イングランドにおける公設民営学校アカデミーのヒアリング調査、イングランドで民間委託された地方当局のヒアリング調査、スコットランドにおける地方教育当局のヒアリング調査を行うことができた。 また、1990年代以降のスコットランドの学校評価システムの変遷について、主にHMIおよびEducation Scotlandといった査察機関の活動に焦点を当てて論文にまとめることができた。 また、イングランドの教育水準局の20年間の活動をNPM型行政統制システムの変化という視点からまとめる学会報告の準備を進めた(2015年5月9日に報告)。 アカデミーや地方当局については複数個所の訪問が行えることが望ましかったが、受け入れの承諾を得ることが難しく、一つずつの訪問にとどまっており、2015年度の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、以下の調査研究と論文執筆を行う予定である。2015年5月にイギリスでは総選挙が行われたが、保守党が単独政権を担うこととなったため、これまでの教育政策の路線は基本的に継承されるという前提で計画をたてている。 まず公設民営学校の調査では、スポンサー型アカデミーとフリースクールの訪問とヒアリングを行う。次に、アカデミー化されていない公立学校における保守党政権の教育政策や教育水準局査察の受け止めのヒアリング調査を行う。またイングランドの比較対象として、スコットランドの公立学校の訪問調査を行い、学校査察の実態とそれが果たしている機能についてヒアリングを実施する。 イングランドの学校査察の1990年代から2010年代までをNPM型行政システムの形成と変化という観点から概観した論文を執筆するとともに、イングランド、スコットランド、および日本の学校評価システムの違いを分析するための理論枠組の構築に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
イギリスでの調査時期が年度末にずれ込んだため、一部の支払いが2015年度にずれ込んだので予定の支出額に満たない執行状況となった。また、事務処理にかかる謝金が当初の予定と異なり生じなかったため、その分を次年度使用することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度は、イングランドにおけるアカデミーやフリースクール、公立学校のヒアリング調査、スコットランドにおける公立学校の訪問調査にかかる通訳料、旅費、滞在費に支出を行う。また東京都や長野県における学校評価の現状を調査するための旅費、滞在費などに支出する。またイギリスの教育改革、学校評価、行政改革についての文献購入、事務用品の購入などを行う。
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