研究課題/領域番号 |
25380178
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
野田 遊 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (20552839)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | シティ / カウンティ / 統合 / 民主主義 |
研究概要 |
米国のシティとカウンティの統合事例について先行研究を整理する中で統合の意義や効果を整理するとともに、実際に、ルイビル・ジェファーソンカウンティやナッシュビル・デビッドソンカウンティ、レキシントン・フェイヨットカウンティに出向き、インタビュー調査を実施した。その結果、政府間の統合目的には、経済発展、財政効率の向上、公平性の確保、二重行政の撤廃、都市格の向上があることをまず明らかにしたうえで、統合効果は必ずしもすべての統合事例で十分にあがっているわけではないものの、経済発展の効果を上げる事例が見出せることがわかった。統合後のサービスは、シティ・カウンティ政府が提供するUrban Service Districtと、シティを除くカウンティ部分で提供されるサービスの対象地域General Service Districtで異なる体系になる点が重要である。つまり、同じカウンティ内でサービスの種類が地域により異なり、現在フルセットでサービスを提供する日本の自治体が将来視野に入れるべき内容であった。また、人口増加に伴う下水道整備などのサービス需要の増大が統合の背景になってサービスが大きく充実した事例があったほか、一方で住民はサービス向上にともない税が増加することを避けるため統合を選択しない郊外都市の事例が見いだされた。さらに、統合は住民投票により決定されるが、その過程で幾度も反対意見が提示され、成功は統合失敗を経たうえで実現していることがわかり、そのような状況であるからこそ、統合後にはしっかりと住民の意向をくみ取るとともに、住民に説明できるように情報提供を積極的に行うほか、議員の地域への配置数を多くすることで、地元ニーズを迅速かつ適切に政府に連絡する工夫がなされている事例もみられ、政府運営上の民主的手続が手厚くなされるようになっている点を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
垂直統合政府の統合前後の民主性や効率性の変化、民主性の効率性に与える影響を定量的に検証するために、まずは25年度に米国のシティ・カウンティ統合政府等の海外事例を調査した。米国へのヒアリング調査は当初の予定通り先方のアポイントメントをとることができ、最も重要な事例であるルイビルジェファーソンカウンティをはじめ、統合50周年で盛り上がっていたナッシュビル・デビッドソンカウンティ等の事例を調査することができた。一方で、日本の事例についても情報収集を行っているが、しかしながら、大阪都構想、中京都構想ともに具現化には程遠い段階で充実した情報収集に苦慮している。また、住民アンケートについては計画の段階で実施に至っていないが、先行研究や財政データ等を収集しており、計画はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
シティとカウンティ政府の統合事例に加え、実際には統合には至っていないが統合を検討している事例まで広げるほか、 International City/County Management Associationといった関係団体やアメリカ政治学会に参加するなどして、さらに多くの情報収集をヒアリングや論文収集等を通じて進める。一方で文献研究は論文や書籍で新たに報告されるものもあり、それら最新の事例や知見の収集にもつとめる。あわせて、平成25年度から計画を進めてきた米国でシティ・カウンティの統合を経験した住民に対するアンケートを実施することにより、統計書等では把握できないデータや情報収集を進め、それらの情報整理を通じて統合事例の民主的手続や効率化の変化を把握する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
住民アンケート調査を実施する予定であったが、どの地域にどの程度の規模で実施するか、またどのような内容にするかといった計画段階にとどまったためである。 既にアンケート調査の骨子や規模、地域は検討しているため、26年度に住民アンケート調査を実施する予定である。
|