研究課題/領域番号 |
25380178
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
野田 遊 愛知大学, 地域政策学部, 教授 (20552839)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 都構想 / シティ・カウンティ統合 / Council of Governments / 民主主義 / 効率性 |
研究実績の概要 |
垂直統合政府の民主性や効率性の変化を把握するために、国内外の事例を研究した。国内事例のうち特徴的であったのは、中京都構想における自治体連携の検討である。担当者は海外の自治体連携組織について関心を強く抱いており本研究がその期待に応えられるものと思われた。なお、国内の都構想では民主性の変化についての議論はあまりなされていなかった。 海外事例として、統合検討実績があるが統合には至っていない地域をとりあげ多数のインタビューを実施した。ノースカロライナ州のシャーロット市、マクレンバーグカウンティ、ペンシルバニア州のピッツバーグ市、アレゲニーカウンティ、テネシー州のメンフィス市、シェルビーカウンティ、ノースカロライナ大学とピッツバーグ大学の教授にインタビューを行った。なぜ統合に至らないかという理由のうち日本の参考になるものは、民主的正統性が経済的効率性に勝る決定がなされるという点であった。つまり、いくら統合により効率的になることがわかっていても住民たちは自らの住む近くに行政サービス(警察や消防など)がほしいので、統合には反対するということであった。さらに統合に向けた議論においては、タウンミーティングを複数回開催したり、関心を高めるためにマスメディアを行政がうまく利用するというなかで、民主的手続を確実なものにしていく努力がなされていた。 あわせて冒頭に述べた日本の都構想検討部署が関心をもつ自治体連携組織についても情報を得るため、はじめにNational Association of Countiesにインタビューを行い米国のカウンティの情報を得て、ノースカロライナ州やワシントンDC、ペンシルヴァニア州のカウンシルオブガバメンツ(COG)やヴァージニア州の連携組織へのインタビューを行い、対応できるサービスの範囲や意思決定の方法など、都道府県間や県と市の連携にも活用できる情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の垂直統合政府に関わる事例を多くインタビューすることができており、計画当初に必要とした民主主義や財政効率に関わる情報を的確に入手できている。あわせて調査の途中で明らかになった、日本の都構想検討部署が求めている海外の自治体連携組織の事例も複数入手できており、これらはこれまで日本でほとんど紹介されてこなかったものであり有益な情報と自負している。その他、アメリカ行政学会、アメリカ政治学会、これらの学会が主催しているWebinar(ウェブ上の会議)にも参加し、最新の行政研究情報を入手できている。なお、インターネットアンケートは、すでに調査項目を検討していたが、インタビューを進めるうちに、解決する問いも多く、さらに吟味してから実施する方が望ましいと考え、あえて平成27年度のアンケート実施に切り替え、そのかわりにインタビュー調査をかなり多く実施することにした。
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今後の研究の推進方策 |
米国での事例研究を進めているうちに、判明したことは地方自治体やその連携組織があまりにも多様であることであった。そのため残る調査は、第一に、米国において垂直統合政府に関わるさらに多くの事例をインタビューをしたり、統計データの把握や文献収集を進めることである。これらの事例を網羅していくなかで、日本の都道府県や市町村の統合、自立などの改革の可能性をバラエティをもって検討することが可能となる。さらに、シティやカウンティのサービスに関わるアンケートを実施する。このアンケートは事例を吟味する中で、必要な項目を絞り確実に回答を得るものとする。あわせて、平成27年度には当初の予定どおり、韓国の垂直統合事例として、済州自治道の統合の成果と課題を丹念に研究ため、当該地域へインタビューを実施することで、日本の行政改革の可能性と課題を明確にする。これらのインタビュー調査やアンケートに加えて、学会への参加を行い、研究情報の収集と成果の報告に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、インターネットアンケートを平成27年度に後回しとして、インタビュー調査を先行させたためである。米国の地方自治体や連携組織の形態や体制は多様であるため、できる限り多くの事例をインタビューすることを先行させ、また、インタビューの中で得られる情報に基づきアンケートで質問しなくてもよい内容も生じた。アンケート調査の質問項目は昨年度からほぼ検討が終わっておりすぐにでも実施できる状況にある。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年年度においてインターネットアンケートを行うこととし、その成果を取りまとめることにする。既に多くのインタビューを実施している中で、米国の行政組織や体制を把握するうえで、特に重要なアンケートの設問は本研究においては住民が行政が行うサービスを理解しているかどうかである。米国では特に自治体の組織が多様であるため、わかりづらい環境になっており、一方で民主主義や参加を重んじる国である。このような点をふまえ、米国での住民の行政やサービスの認知度を把握することを特に重視する。 なお、米国の行政の多様性を理解するうえで、引き続きインタビュー調査が必要であるため持続的に事例研究を増やしていく。あわせて、韓国の済州自治道の事例を研究し、あわせて、統計データの分析結果も吟味し日本の都構想など垂直統合政府の可能性を検討する。
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備考 |
(1)はEastern Regional Organization for Public AdministrationのAsian Review of Public Administration (ARPA)を紹介するページに研究の要約が掲載されている。「米国のシティ・カウンティ統合政府と都構想への示唆」は大学の機関リポジトリに掲載されている。
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