研究課題/領域番号 |
25380179
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
梅川 正美 愛知学院大学, 法学部, 教授 (30135280)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フォークランド / 領土 / 戦争 / 外交 / 安全保障 / 内閣制度 / 英米関係 / サッチャー |
研究概要 |
1、本科学研究費補助事業「イギリスの領土紛争としてのフォークランド戦争の研究」は、初年度である25年度から29年度までの5年間の計画で行う。そこで、初年度である本年度の目標は、第1が一次資料の収集、第2が内閣制度の考察の開始、第3が文献収集であった。 2、まず第1の資料収集であるが、25年度は4月よりの日本での資料収集に加えて、イギリスでの資料収集を2回行った。第1回目は、私費によって、25年の8月23日から8月27日まで、イギリスの公文書館(The National Archives)で、資料の収集を行った。第2回目の資料調査については、科研の費用で26年3月11日より23日まで、公文書館に行き、資料収集を行った。その成果であるが、サッチャー首相の行動記録、内閣の閣議の記録、外務省の交渉に関する記録、戦時内閣の記録、さらにフランクス委員会の調査記録、アメリカとの交渉記録、当時の官僚や議員たちの手紙類、アメリカのヘイグ国務長官の交渉の手紙や電報などの記録、国連との交渉に関する国連関係文書と手紙や電報などの記録などが、入手できつつある。資料は、公文書館での一次資料現物の写真撮影で収集しており、その写真の数は6000枚を超える膨大なものになった。 3、第2の目標である内閣制度の考察の開始については、初年度は、資料の整理をはじめている。これは簡単ではないが、その内容は、大学紀要に執筆した「フォークランド諸島をめぐる戦争を防止できなかったのはなぜか(フランクス調査委員会報告書)」(印刷中)で一部を発表した。さらに、研究代表者編著の『比較安全保障』(25年9月、成文堂)の編集およびイギリスの章に反映させている。 4、第3の目標である文献収集についても、科研の費用とともに大学の研究費や私費を使いながら、網羅的に開始してきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1、初年度である25年度では、資料収集が最重要の第1の目標であった。この点において予想を上回る成果が上がっている。予定では、日本においてのみならず、イギリスの公文書館で資料調査を行い、公文書館での資料が不足する場合には、チャーチル・アーカイブを探索しようとした。そこで平成25年の8月に第1回目の、自費での公文書館調査を行い、平成26年の3月には科学研究費での第2回目の公文書館調査を行った。その結果、公文書館では、25年度から公開されているフォークランド戦争関連公文書は、膨大なものであることがわかった。すなわち、PREM、CAB、FCO、WO、DEFEなどの各符号が付けられた資料があり、各資料が膨大なファイルでなりたち、全体的には、どれほどになるか予測がつかない。2回の公文書館の調査においては、連日、資料の写真撮影を行ったが、その量は6000枚を超える。研究計画の段階では、公文書館での資料がどの程度あるか不明であり、これほど豊富な内容とは予測していなかった。これは、予想を超える成功であった。そこで、公文書館の調査を継続し、これが終わったあとでチャーチル・アーカイブの調査に入ることにした。 2、25年度の第2の目標は、内閣の戦争への関与のありかたの考察の開始であった。そこでフランクス委員会報告(日本で入手)や証言・手紙(公文書館で入手)の考察を開始した。この一部は、論文「フォークランド諸島をめぐる戦争を防止できなかったのはなぜか」で発表し、図書『比較安全保障』に反映させた。 3、第3の目標である文献収集であるが、これも着実な成果をあげている。25年度予算は直接経費70万円であるが、このうち旅費の約53万円を控除した残りの約17万円は、すべて文献収集にあてている。さらに大学の研究費や私費も投じて文献収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1、当初の平成25年度4月の交付申請書に書いたように、研究2年目にあたる平成26年度の研究には3点の目標がある。第1が資料収集の継続であり、第2が英米関係を中心とした考察の開始であり、第3が文献収集である。 2、第1の目標が、初年度に続く資料収集である。初年度の25年度にイギリス公文書館で2回の資料調査を行った。その結果、多くの資料の撮影を行ったが、これでもまだ公文書館の資料収集は終わっていない。そこで26年度は、公文書館の調査を継続する。サッチャー首相が戦争の前から戦争中にかけてどのような日程で行動したか、閣議ではどのような議論を行ったか、外務省はどのような交渉をしたか、戦時内閣はどのような役割を果たしたか、アメリカとの交渉はどのようであったか、これらの資料は、25年度に、ある程度は収集したが、網羅的に全ての関係文書を集めることが重要であり、26年度は、まずこれを目標とする。これに、もし一定の目途がたつならば、次にチャーチル・アーカイブの調査を行おうと考えている。 3、第2の目標が英米関係の考察の開始である。当時のアメリカの国務長官であったヘイグは、開戦の4月2日より5月末まで、戦争回避のために努力した。ヘイグ国務長官は、イギリス政府とアルゼンチン政府の間で、何度も、和平交渉の仲介をしようとした。しかしながら、この経過の実態は、明らかではなく、この点を一次資料によって解明したい。さらにレーガン大統領は、ヘイグを解任しており、大統領としてはイギリス側で行動したいという希望を持っていたかもしれないが、この点の解明が必要である。 4、第3の目標が、文献の収集であるが、25年度に続けて26年度も、この作業を継続する。フォークランド戦争は、歴史的な研究だけでなく、現代の戦争一般の哲学的な問題としても研究されてきており、この点の文献も収集する。
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