研究課題/領域番号 |
25380179
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
梅川 正美 愛知学院大学, 法学部, 教授 (30135280)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フォークランド / 領土 / 戦争 / 外交 / 安全保障 / 内閣制度 / 英米関係 / サッチャー |
研究実績の概要 |
本科学研究費補助事業「イギリスの領土紛争としてのフォークランド戦争の研究」は、平成25年度から29年度までの5年間での研究である。平成26年度は研究期間の2年目であった。2年目の目標は、第1が、初年度に続く資料の収集であった。第2が、フォークランド戦争における英米関係の解明を進展させることであった。第3が、二次資料としての文献収集であった。 第1の目標であった資料収集であるが、本年度は、イギリスの公文書館とケンブリッジ大学のチャーチル・アーカイブでの資料収集が目標であった。初年度の調査で、公文書館が平成25年度から公開している資料が膨大なものであることが判明していたので、2年目の本年度もまずは公文書館での資料収集を続け、次にケンブリッジのチャーチル・アーカイブでの資料収集を行った。そのために、8月11日に日本を出発し、イギリス時間で11日から21日まで収集活動をして日本時間で22日に帰国した。公文書館では、首相官邸文書(PREM)および外務省関係文書(FCO)さらに軍関係文書(ADM,WO)を中心に収集した。チャーチル・アーカイブでの資料収集は、特にサッチャー文庫を中心に資料の探索を開始した。その内容も膨大であるが、フォークランド戦争関係の書簡類の収集をはじめた。収集の方法は、一次資料の各書類を写真撮影するというものであるが、滞在期間が短期間であったので、収集できた資料はまだ極めて不十分である。 第2の目標は、英米関係の考察の開始であった。本年の調査で、アメリカのレーガン政府の関与のしかたをしめす概要は掌握することができた。第3の目標が、二次資料の収集であった。特に、単にフォークランド戦争だけでなく戦争と領土と平和の関係に関する哲学的な考察に関する文献収集をめざしたが、この点での目標はおおむね達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間の2年目になる平成26年度の第1目標はイギリス公文書館での資料収集の継続およびチャーチル・アーカイブでの資料調査の開始であった。公文書館で収集した多くの資料のうち、まず官邸文書であるPREM32/14、PREM32/5はサッチャー首相の日誌である。PREM19/617、PREM19/622、PREM19/623などは、官邸と国連大使やアメリカ合衆国大使らとの書簡と電報を含む。さらに外務省関係文書のうちFCO7/4610はアルゼンチン大使などとの通信記録を含み、FCO7/4404はブラジルなどとの通信記録を含む。軍関係文書であるADM202/881、ADM202/815/1、ADM202/815/2などは、海兵隊第3歩兵部隊の指揮官や本部の行動記録である。またADM202/881、ADM202/861、ADM202/850は海兵隊第3歩兵部隊兵站部活動日誌である。さらにFCO7/4920、FCO7/4913はアルゼンチンが南ジョージア諸島などに断続的に行った領空侵犯と上陸についての通信記録である。この点は論文「フォークランド戦争の前兆(1)」(愛知学院大学論叢『法学研究』56巻1・2号)で書いている。さらにチャーチル・アーカイブでも資料収集を開始した。 第2の目標は英米関係の解明の開始であった。イギリス公文書館で多くのアメリカ合衆国関係資料を発見した。特にFCO7/4898は、外務省や首相官邸とアメリカ合衆国の大使などとの通信記録である。FCO7/4537は、戦争回避の主役であったヘイグ国務長官に関する文書である。 第3の目標は、文献の収集であった。本年度の直接経費である100万円のうち、資料収集のための旅費が42万7850円である。直接経費から旅費を控除した残りの57万2150円の全ては、文献の収集にあてており、当該関係の文献はある程度入手した。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の3年目にあたる平成27年度の目標は、第1に資料収集の継続であり、第2に、文献収集であり、第3に、イギリスの研究者との交流であり、第4に、論文の執筆である。 第1の目標である資料の収集は、研究期間開始からの2年間で相当の進展はあるものの、まだきわめて不十分である。予算上、出張期間が10日ほどしかとれないので、日本から公文書館に資料印刷を直接依頼する方法も考えて、できるかぎり多くの資料を集めたい。またチャーチル・アーカイブの資料の収集も必要である。フォークランド戦争についてサッチャーがどう考えていたのか、この点は、まだ必ずしも明確ではなく、アーカイブの資料は重要である。 第2の目標が文献収集である。フォークランド戦争に直接関係する文献で収集できていないものがまだあるのでこの文献の収集が必要である。しかしこれに加えて戦争と領土に関する哲学的な文献も収集するようにする。さらに、最初の交付申請書にも、本研究は日本の領土紛争についても関係があることを述べておいたが、この点の文献も収集したい。つまり、特に英米を中心とする外国の研究が日本の領土問題と安全保障をどのように考えているか、これに関する文献も収集することにする。 第3の目標がイギリスの研究者との交流である。イギリスのウォリック大学法学部のジョン・マッケルダウニー教授は、本年9月に来日するので、その際に研究内容について交流する。なお昨年から交流を開始したエディンバラ大学のガレー・ナブラジ・シン教授とも研究交流を継続する。第4の目標が論文の執筆である。本研究期間の1年目と2年目には、資料の整理に主たる時間をつかったが、3年目の本年度は、論文執筆にも力をいれる。
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