研究課題/領域番号 |
25380179
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
梅川 正美 愛知学院大学, 法学部, 教授 (30135280)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フォークランド / 領土 / 戦争 / 外交 / 安全保障 / 内閣制度 / 英米関係 / サッチャー |
研究実績の概要 |
本研究は、平成25年度から29年度までの5年間での研究である。平成27年度は研究期間の3年目であった。平成27年度の目標は、第1に資料収集の継続であり、第2に文献収集であり、第3にイギリスの研究者との交流であり、第4に論文の執筆であった。 第1の目標である資料取集は、イギリス公文書館で収集している資料がまだ不十分であるので、27年8月10日に日本を出発し、イギリス8月10日より18日まで公文書館で資料収集を行い、8月19日に帰国した。しかし、予算上、文献の収集に多くの資金を必要するようになった。そこでロンドンのイギリス公文書館での資料収集は、自己資金で行うこととして、科学研究費は使用しなかった。しかし、その成果はあった。 第2の文献収集については、フォークランド戦争についての多くの出版物を集める作業を行った。特に、27年度は、戦争一般の問題と接合する理論問題に関心をあわせて文献の収集を行った。 第3の目標であったイギリスの研究者との交流については、本補助金を使うことはしなかったが、非常に大きなものがあった。エディンバラ大学のガレー・ナブラジ・シン教授との研究会を愛知学院大学で4月11日に行った。ウォリック大学のジョン・マッケルダウニー教授との研究会を愛知学院大学で9月1日に行った。ジョン・マッケルダウニー教授およびエディンバラ大学のクリス・ヒムズワース教授の両教授との研究会を名古屋大学で9月2日に行い、私は討論者として議論した。第4の論文執筆については、フォークランド戦争を考えるために、単にフォークランド戦争についてのみならず、イギリスの現代政治についての論文や、軍と国家との関係を支えるイギリス民主主義についての論文などを執筆するよう努力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の目標は、第1に資料収集、第2に文献収集、第3にイギリスの研究者との交流、第4に論文の執筆であった。第1の資料取集については、イギリス公文書館で、たとえば内閣文書であるCab292/21および外務省文書であるFCO7/4532、FCO7/4533、FCO7/1234他の資料を収集して、フォークランド戦争中の内閣や外務省の行動の一部の資料を得た。 第2の文献収集については、戦争と領土問題、および軍と国家との理論的な関係の文献にひろげて収集した。特に、尖閣問題などに直面する日本にとって、領土紛争がどのような場合に武力戦争になるのか、この点を考えることは重要であるが、そのためにはナショナリズムや軍制度の問題も考察する必要があり、これらの文献収集も開始した。 第3の目標であったイギリスの研究者との交流については、「概要」でのべたイギリスの3人の研究者と、特にナショナリズムと国家の関係について、議論を継続している。第4の論文執筆については、フォークランド戦争の勃発の理由に焦点をしぼって「フォークランド戦争の前兆(2)」を執筆して、愛知学院大学『法学研究』57巻3・4号に掲載するが、現在まだ印刷中であり、出版は来年度になる。さらに、イギリスがナショナリズムに苦しんでいる現状について「英国2015年総選挙(分裂に直面する時代)」を、陸上自衛隊「修親」刊行事務局『修親』平成27年7月号2-5頁(平成27年6月発行)に掲載した。さらに、ナショナリズムに直面するのは、イギリスだけではなく日本も同じであるが、この点についてReferendums in Britain and Japanを愛知学院大学論叢『法学研究』57巻1・2号、平成28年2月(129-133頁)に掲載した。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度(平成28年度)は、全体の5年間の研究期間のうちの4年目にあたる。この年度でも、第1に、資料収集と、第2に文献収集と、第3にイギリスの研究者との交流、第4に執筆を行う。第1の資料であるが、これまでの3年間の資料収集で、ある程度のものは収集できているが、毎年、短期間で公文書館に収集に行くというかたちなので、まだ収集に不足がある。さらに、論点が次第に明らかなるにつれて、より精密な点での資料が必要になり、その収集をしなければならなくなっている。 第2文献収集であるが、領土問題と戦争が、どのような場合に結合するのか、この点の文献の収集をさらに行う。この論点は、フォークランド戦争それ自体をこえるのだが、日本の尖閣諸島をはじめとする領土問題と、戦争の可能性との関係を考えるうえでは、きわめて重要な点である。 第3が、イギリスの研究者との交流である。とくに2015年度(平成27年度)までに構築してきた研究ネットワークを活用する。エディンバラ大学のガレー・ナブラジ・シン教授およびヒムズワース教授さらにウォリック大学のジョン・マッケルダウニー教授との研究交流をつづける。特に領土問題と戦争を、しばしば結合するナショナリズムについての議論をつづけ、来年度には、日本語と英語の両方の出版を行う予定である。 第4が論文の執筆である。これまで収集した資料と文献をいかしながら、さらにイギリスの研究者との交流を基礎として論文の執筆にあたる。特にフォークランド戦争について、領土問題が戦争になったのはなぜか、この点に関心をもって執筆にあたる。単にフォークランド戦争の歴史的な経過のみならず、帝国意識やナショナリズム、軍と政府の関係なども含めて、研究する。
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