わが国の自治体における危機管理体制の実情を明らかにするため、危機管理組織と危機管理を担当する責任者の専門性や特性を確認するための全国規模のアンケート調査を実施した。 その結果、この20年余りの間に大きな自然災害や原発事故等を経験したり、世界各地でテロ事件が発生したりしたことから、自治体の危機管理体制が飛躍的に充実してきていることが明らかになった。特に、中規模以上の自治体では危機を自然災害だけに限定するのではなく、様々な危機を対象とした危機管理システムを整えてきている。 しかし、基本的には平常時を前提とした行政組織の中に、危機管理組織を位置づけることの難しさがあり、行政体系の中での組織の位置づけや、危機管理責任者の職位、危機管理者および危機管理組織が有すべき専門性といういう点で、必ずしも共通の理解が浸透しているわけではない。都道府県レベルを中心に、危機管理監として消防、警察、自衛隊関係者を採用していることが多いが、危機管理活動は行政組織全体で行うことを考えると、行政の専門性との兼ね合いが問題になることも課題として考えられる。一方で、中規模以下の自治体では、危機管理は他の業務との兼任であることが多く、危機管理の専門性が乏しいという問題も見受けられる。 今回の研究は現状を把握することが主たる目的であったので、今後は、自治体規模、自然条件や地政学的条件等を勘案して、どのような危機管理体制を構築するのが良いかの研究が必要である。
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