研究課題/領域番号 |
25380184
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
東原 正明 福岡大学, 法学部, 講師 (00433417)
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研究分担者 |
福田 宏 京都大学, 地域研究統合情報センター, 助教 (60312336)
小野 一 工学院大学, 工学部, 准教授 (80306894)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原子力政策 / 脱原発 / 中央ヨーロッパ / ドイツ / オーストリア / チェコ / スロヴァキア / 比較政治学 |
研究概要 |
2013年度は、研究分担者がそれぞれのテーマに則して研究を遂行するとともに、随時研究会を開催した。また、海外調査も実施した。 各研究分担者は、それぞれの研究分担に従って文献の収集と調査研究を行った。小野は、論文「赤緑連立の脱原発合意とドイツ政治への影響」(『FORUM OPINION』23号、2013年12月)などでドイツの原子力政策について検討したほか、同国の左翼政党の動向に関しても考察を行った。福田は、チェコやスロヴァキアに関して執筆した論文等において、両国の歴史的な発展に関して議論を展開し、本研究に必要な基礎的研究を行った。東原は、オーストリアの原子力政策に関する研究をふまえて、ドイツ現代史学会におけるシンポジウムに討論者として出席するなどした(「シンポジウムI「核技術の社会文化史―欧米諸国の場合―」」ドイツ現代史学会、2013年9月)。 研究会は5月に第一回研究会、9月に第二回研究会を開催した。第一回研究会では、これまでの各研究分担者の研究を整理し、本共同研究の進め方について意思統一を図った。また、ヨーロッパ諸国およびEUの原子力政策に関しても討論を行った。第二回研究会では、小野が2013年度日本政治学会研究大会で行った研究報告「政党綱領研究の新動向~「ドイツ社会民主党におけるエコロジー思考の展開/党内オピニオン・リーダーの思想的軌跡を手がかりにした、政党政治研究再活性化の試み」のための予備的研究」をふまえて意見交換するとともに、各自の研究の進捗状況について報告した。 海外調査は、オーストリアについて東原が実施した。ウィーンの国立図書館にて、同国政府等が発行した文書など日本国内で入手不可能な資料を収集した。また、分担者全員で2014年度に実施予定のIAEAなどに対する聞き取り調査に関して、同機関職員との間で予備的な協議をするなどした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2013年度は、各研究分担者がそれぞれの研究分担に従って文献の収集と調査研究を行った。小野は、発表した論文や学会報告を通じてドイツにおける原子力政策の形成過程などを明らかにしつつある。福田は、原子力政策それ自体を直接扱った論文や報告はなかったものの、本共同研究にとって必要不可欠な基礎的研究を行った。東原も基礎的研究を進めたほか、オーストリアの原子力政策に関する研究をふまえて研究会で報告を行うとともに、ドイツ現代史学会には討論者として出席した。さらに、東原はオーストリアにおいて調査を行い、2014年度以降の研究遂行に必要な資料を多数収集した。これらをふまえ、両者はチェコとスロヴァキア、オーストリアというそれぞれの研究対象国の原子力政策に関する論文の執筆準備を進めている。 さらにこの海外調査では、IAEA職員と懇談し、2014年度に予定しているIAEAなどの機関への聞き取り調査(研究分担者全員で実施)にあたって必要な訪問先の選定などについて協議を行うことができた。また、各地の様々な研究所研究員や政治家との間で、原子力政策のみならず現代オーストリア政治に関して幅広く意見交換を行うとともに、人脈を拡大することができた。 第一回研究会では、中央ヨーロッパ諸国を中心としつつヨーロッパ全体の原子力政策について討論し、本共同研究を進める上での方向性を確認することができた。さらに第二回研究会では、小野による日本政治学会での報告をふまえることで、各研究分担者の研究の進捗状況について具体的な意見交換を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、3年計画で進められる本共同研究の2年目であり、最終年度(2015年度)の研究取りまとめに向けて準備をすることとなる。 2013年度に行われた各研究分担者の研究および海外調査を通じて、IAEA(在ウィーン)などの機関への聞き取り調査の準備を進めることができた。調査対象機関にEURATOMなどを加えることも検討しており、研究分担者間で十分協議したい。本調査は原則として全員で実施する。したがってウィーンでの研究会開催が可能となるため、現地の状況を十分にふまえて議論できると思われる。加えて、各分担者は研究対象とする国での調査(エネルギー所管省庁、政党、報道機関、研究所などを対象)を各自行い、幅広く資料・情報収集する予定である。なお、出張可能時期などの時間的制約もあることから、効率性という点を考慮して、これら二つの海外調査を同時に行うこともあり得る。 また、年3回程度予定している研究会では、可能であればゲストスピーカーを招き、意見交換を行いたい。実現すれば、本研究を多面的に検証し、さらに深化させることができよう。 これらの研究活動に基づいて、各研究分担者は論文執筆を進めることになる。完成したものから随時公表し、学術的に貢献することとしたい。すでに2013年度には、小野が研究報告を通じて広く社会への成果の発信にも着手している(「ドイツ政治の現在と脱原発社会/フクシマ以降に一政治学者が考えたこと」、ロバアト・オウエン協会第148回研究会、2013年12月)。2014年度は論文執筆と並行して、こうした活動も実施していきたい。その上で、最終年度となる2015年度には、地域研究コンソーシアム(京都大学地域研究統合情報センター)発行の学術雑誌『地域研究』に特集を組んで発表するほか、重要な論文については著書などの形で出版物として刊行することを計画しており、そのための準備を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由としては、以下の二点がある。 第一に、研究代表者である東原の所属機関である福岡大学においては、科研費を交付されている研究代表者が応募可能な学内での競争的研究資金がある。東原はこれに応募し、研究費を受けることができた。当初、文献等の購入および海外出張には科研費から支出する予定であったが、それらの支出の大部分にこの学内の研究費を充てることができたことが、東原に次年度使用額が生じた最大の理由である。第二に、小野はドイツへの調査旅行を計画し、準備を進めていたところであった。しかし、日程上、調査旅行を行うことが不可能となったため次年度に実施するように予定を変更した。そのため、次年度使用額が生じることとなった。 2013年度に生じた次年度使用額は、各研究分担者で再配分し、文献等の購入や旅費のために有効に活用したい。年3回程度予定している研究会に、可能であればゲストスピーカーを招いて意見交換を行うことを考えており、そのための資金としても使用したい。 とくに、2014年度は研究分担者全員でIAEA等への聞き取り調査を予定している。次年度使用額の大部分はこの海外調査の旅費として使用されることになる。さらに、各研究分担者は、それぞれが研究対象としている国への調査も実施する予定である。出張可能時期などの時間的制約から、各分担者が自身の調査をIAEA等への調査と同時に行う可能性も排除されないが、両調査を個別に行う場合には、そのための旅費として使用する。
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