2013 年度実施状況報告書

現代国際関係における「共通の利益」の形成過程に関する政治学的研究

研究課題

研究課題/領域番号	25380189
研究種目	基盤研究(C)
研究機関	東京大学
研究代表者	古城佳子東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30205398)
研究分担者	石田淳東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90285081)
研究期間 (年度)	2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード	共通の利益 / 冷戦後の国際関係 / 国際政治学理論 / 国際政治経済論
研究概要	本研究は、冷戦後の国際関係（主体の多様化、イシューの多様化、イシュー間の関連性の増大という特徴が見られる）において「共通の利益（common interest）」の認識はどのように形成されるのか、「共通の利益」の認識に影響を与える要素は何かを明らかにすることを目的としている。本年度（平成25年度）は、国際協力に関する理論的先行研究、グローバル・イシューに関する国際協力についての先行研究、認識形成の政治過程に関する理論的な先行研究を網羅的に渉猟し整理することに焦点を置いた。この目的のために、学外からの専門家を招聘し研究会を開催し、国際政治経済分野及び安全保障分野における協力に関し、「共通の利益」がどのように認識されているのかを検討した。このような作業を通して理論的な先行研究の理解を深めるとともに、研究代表者（古城）と分担者（石田）はそれぞれの分野において歴史的にどのように「共通の利益」が認識されてきたのかを明らかにする研究を行った。古城は、日本が経済のグローバル化の中で、通商と金融の分野において、どのように「共通の利益」を認識して経済外交を進めてきたのかを明らかにした。石田は、戦間期及び冷戦期の国際政治学理論において「共通の利益」がどのように位置づけられてきたのかを明らかにした。これらの研究の成果は刊行された。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 2: おおむね順調に進展している理由本年度は国際協力に関連する理論的な先行研究を渉猟し、「共通の利益」について先行研究がどのように理解してきたのかを批判的に検討した。これらの検討を通して、「共通の利益」という概念が、国際政治学で言及はされるものの、理論的な視座が必ずしも明確ではなかったことが確認された。これらの成果を刊行することができたため、当初の計画にある初年度の目標である理論的な先行研究の検討は概ね達成できたと言える。
今後の研究の推進方策	次年度以降は、初年度の研究成果に基づき、個別の事例における研究を進める予定であるが、事例については当初予定した事例（感染症治療薬と知的財産権保護、保護する責任と移行期正義）が適切であるかどうかについて、早い段階で更に検討する予定である。
次年度の研究費の使用計画	代表者が事例研究のための海外出張を計画していたが、その前提となる資料調査において、当初予定していたよりも多くの資料調査を行うことが必要であることが明らかになったため、海外出張を遅らせ、資料調査を優先させる判断をしたため。理論的研究について引き続き資料調査を行うとともに、事例研究のための調査費用及び研究者による研究会の実施に使用する。