研究課題/領域番号 |
25380195
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 覚 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (60359867)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テロ対策 / インドネシア / サウディアラビア / 過激派 / テロリズム |
研究実績の概要 |
三年目は、インドネシアでテロ事件の現場を視察したり、資料収集を行ったりした。またテロ対策の専門家との意見交換を行った。またサウディアラビアで、新たに編纂され出版されたイスラーム的中道思想事典などを収集した。成果は、日本政府の中東政策担当者に対する講義で社会的に還元した。また2016年1月にサウディアラビア・イラン関係は緊張を高めて大きく報道されることとなったが、この文脈でサウディアラビア政府によるテロ対策と対テロ戦争に関して著した。 以上の成果公開を通じて、全方位均衡論の観点から、サウディアラビア政府の対イラン政策を明らかにすることができた。サウディアラビア政府は、1990年代前半から、国内のシーア派過激派対策を開始し、また対イラン宥和政策を推進した。だが、2003年の米国と英国によるイラク侵略作戦の後、イラクではアルカーイダや、シーア派系組織によるによるテロリズムが活発となった。さらにイランやイランの支援を受けた民兵組織による攻撃をアラブ各国のスンナ派が受けたために、サウディアラビアのスンナ派の保護者としての立場が脆弱にされた経緯を明らかにすることで、近年のサウディアラビア政府による主導的地域政策の原因を明らかにする成果をあげた。 またサウディアラビアでは、2016年1月にアブドゥッラー国王が逝去し、サルマーン新国王下による統治が開始された。同国王は、内政と外政で新機軸を打ち出したが、国内外のメディアでは、同政権に対する評価が定まっていないところである。そこで、日本政府の中東政策担当者に対して、同政権の性格、国内政治と地域安全保障政策、実施能力、今後の見通しに関して講義した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年8月から平成27年8月の間、神戸大学若手教員長期海外派遣制度に採択され、カタル・サウディアラビア・スイスで当該科研費とは異なるテーマの研究に従事することとなったため,平成26年度から平成27年度にかけては予定どおりに研究を進めることができなかった。このため、海外調査及び研究成果のまとめを28年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとした。また補助事業期間の延長は承認された。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間の延長申請は承認された。この経緯に応じて、平成26年3月に、インドネシアのジャカルタとジョグジャカルタで、テロ対策の専門家、国会議員、政党関係者、人権活動家などと面談し、近年のインドネシアのテロ対策に関して、意見聴取を行った。また平成26年3月に、シンガポール国立大学にて、サウディアラビアによるテロ対策やイラン関係に関して、国際研究発表を行った。またシンガポール技術工科大学にて、テロ対策の専門家と意見交換した。以上の現地調査による成果を踏まえて、今年度は、本研究課題の成果を総合し、今年度内に国際研究会にて発表する予定である。このために、現在は、収集した資料や聴取結果をとりまとめ中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年8月から平成27年8月の間、神戸大学若手教員長期海外派遣制度に採択され、カタル・サウディアラビア・スイスで当該科研費とは異なるテーマの研究に従事することとなったため,平成26年度から平成27年度にかけては予定どおりに研究を進めることができなかった。このため、海外調査及び研究成果のまとめを28年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越額の一部は、平成28年3月、インドネシアでの現地調査とシンガポールでの国際研究発表と意見交換のために支出した。また平成28年8月に、イギリスのケンブリッジ大学で開催される湾岸研究会議(GRM)2016の安全保障部会での研究発表申請が採用されたので、その経費に充当する。
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