アルカーイダ系テロ集団の脅威が顕在化した後、脱過激化政策によるテロ対策の開始は、意外にも、インドネシアでは遅く、小規模であり、サウディアラビアでは大規模で迅速であった。民主主義のインドネシアでは、関係部局間の調整が不十分であり、またテロ対策特殊部隊による人権侵害が放置されている。サウディアラビアでは、トップダウンにより関係部局間の調整は一元化しているが、アラブの春以後、テロ対策は人権活動の抑圧のために乱用され始めている。ムスリム民主主義国のインドネシアとイスラーム権威主義のサウディアラビアで、それぞれの体制に固有の長所と制約が予想外の経緯を経て現れていた。
|