研究課題/領域番号 |
25380198
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
藤井 篤 香川大学, 法学部, 教授 (90222257)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脱植民地化 / フランス / アルジェリア / 植民地主義 / 民族解放運動 |
研究概要 |
平成25年度は、研究実施計画通りアルジェリアの国立公文書館を初訪問して、史料調査を行った。調査対象は民族解放戦線FLNの創設したアルジェリア臨時共和国政府GPRAの文書であり、21世紀になってから外国人研究者にも利用が可能になったものである。アルジェリアへのアクセスが極度に不便なため、これまでごく一部の研究者にしか利用されておらず、日本人研究者による利用は私が初めてである。 GPRA文書の量は膨大であり、煩雑な文書閲覧申請手続きにより、短期滞在による調査ではその一部しか閲覧できなかった。しかしそれでも、FLNがフランスによる植民地戦争の非道さと、それに抵抗してアルジェリア独立を求める闘争の大義を、国連や国際世論に組織的に訴える国際化戦略を追求していたことを明瞭に確認できた。またFLNがGPRAの創設を早くも1956年から独自に考えていたこと、対外面ではソ連に対する冷淡さとは対照的に、アメリカ国務省との接触を通じて米国の役割に大きな期待を寄せていたことを史料的に裏付けることができた。 他方、インドのようなアジアの独立国が必ずしもFLNから信用されておらず、むしろ植民地主義勢力に対して微温的な態度をとる国として警戒されていたことや、アラブ・リーグやエジプト政府からの経済的支援が十分なものではなかったことも明らかになった。 FLNが非国家主体でありながら、さまざまな国家や国際機関を利用する「外交戦略」を通じて国家形成へと歩みを進め、自らの交渉地位を高めていこうとしていたことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度に実施したアルジェリアでの史料調査の成果は、「史料紹介 民族解放戦線側から見たアルジェリア戦争」と題して日仏歴史学会の機関誌『日仏歴史学会会報』第29号(2014年)にまもなく掲載される予定である。これは従来ほとんど知られてこなかった国の公文書館の紹介としても意義をもつものである。 ただし昨年度の調査は短期滞在中に行われたものであり、アルジェリア国立公文書館の煩雑な資料閲覧手続きのせいで、十分には進展しなかった。FLNの指導者のアブデルハミド・メーリの私文書の閲覧請求もしたが、閲覧許可審査に時間がかかり、滞在中には許可が出なかった。また1956年に行われたフランス社会党とFLNの間の秘密の「接触」に関する文書は、GPRA文書群のなかには発見できなかった。これについては再照会中である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度のアルジェリアでの史料調査には時間的限界があり、今年の夏にはフランスでの調査とともに、アルジェリアを再訪して第二次調査を行う。すでにメーリ文書など、閲覧希望文書については閲覧許可を現時点では得ている。前回の調査では閲覧しきれなかったGPRA文書のほかに、FLNフランス連合会の文書、アルジェリア赤十字の文書などもすでに閲覧許可申請をしており、閲覧できる見込みである。 フランスではセーヌ・サン・ドニ県文書館でのフランス共産党幹部のギヨの文書、国家文書館では共産党書記長トレーズの文書、パリ警視庁ではフランス本土でのFLNの活動を追跡した警察文書を閲覧する予定である。 以上の作業を基礎にして、英米仏とFLNが絡み合う国際的次元、共産党が展開する国内での反植民地主義闘争の展開について、各々論文化することを目指す。
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