研究課題/領域番号 |
25380200
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
五月女 律子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50326526)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際関係論 / 安全保障防衛政策 / 北欧協力 / 平和維持活動(PKO) / 国際危機管理活動 / ノルウェー / EU |
研究実績の概要 |
本年度は、北欧諸国(特にノルウェー、フィンランド、アイスランド)の安全保障防衛政策および国際的危機管理活動に関する文献の収集を国内外の大学図書館等で行い、論文の執筆を進めた。また、洋書・洋雑誌を中心に、平和維持活動(PKO)や安全保障防衛政策における北欧諸国間の協力を研究対象とした書籍および学術論文も収集した。 9月にフィンランドおよびアイスランドに渡航し、現地での資料収集を行った。フィンランドでは、ヘルシンキ大学の図書館において文献を閲覧・複写した。また、軍事博物館において、フィンランド軍による平和維持活動や国際的危機管理活動の実態の展示および説明を閲覧した。アイスランドでは、アイスランド国立・大学図書館およびThe Nordic House図書館で文献・資料を閲覧・複写した。また、両国において、学術専門書を扱う書店で研究課題に関する書籍を購入した。 本年度の調査研究の成果として、フィンランドは軍事攻撃以外の国際的危機管理活動に積極的に参加しており、軍事分野において他の北欧諸国との協力の深化・強化を志向していることが明らかになった。アイスランドは自国軍を持たないため軍事分野での国際協力に参加できないが、文民活動で国際的危機管理活動への貢献を目指しているといえる。 研究成果の発表としては、昨年度の調査結果の一部に基づいて、ノルウェーの安全保障防衛政策と国際平和活動の関係を分析した論文を1本執筆・刊行した。ノルウェーは国際平和を目指す理想主義的な対外政策を選好する一方で、NATO を中核とした自国防衛を重視する安全保障防衛政策を冷戦時から継続しつつ、2000 年代に国際平和活動が安全保障防衛政策に取り込まれ、NATO やEU 主導の国際平和活動に積極的に参加することで両組織への貢献を目指し、北欧諸国との協力も推進する方針へと変容したことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はフィンランドおよびアイスランドにおいて、両国の安全保障防衛政策と国際的危機管理活動、および当該分野での北欧協力に関する資料収集を行った。本年度4月から所属大学が変わり、前任校と異なる科研費の使用ルールの下で経費を執行したため、物品購入および海外出張については、当初の支出予定金額と異なることとなった。資料収集・調査自体は、当初の予定から大きな変更をせずに進めることができた。 しかし、所属機関の移動に関わる事項に多くの時間を取られることになったため、収集した文献や資料の精読および論文の執筆に確保できる時間が当初の想定より大幅に減少し、執筆・発表できた論文の本数は予定より少なくなった。5月にノルウェーの安全保障防衛政策と国際平和活動の関係を考察した論文を執筆し、査読を経て12月に刊行することができたが、本年度に発表できた論文は上記論文の1本にとどまってしまった。しかし、次年度はスウェーデンの国連平和維持活動を分析した論文と、アイスランドの国際平和活動を考察した論文を執筆、発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も、北欧諸国の安全保障防衛政策と平和維持活動・国際的危機管理活動での協力の連関の分析を、各種文献・資料・データの収集および検討と、現地の研究者や関係者へのインタビュー調査を行うことにより進める。 9月にノルウェーとスウェーデンで、資料収集とインタビューを行う予定である。特に、ノルウェーでは過年度の渡航時にアポイントメントが取れず、インタビューができなかったため、再度連絡を試みる予定である。国内外で収集した各種文献・資料・データの分析と、北欧各国の研究者および関係者へのインタビュー等の研究調査結果を踏まえて、翌年度に2本程度の論文を発表することを目指す。また、今後は本研究課題による5年間の研究成果を纏めて学術書として出版したい。 夏前までは、日本国内で英語論文を中心とした既存研究を収集し分析する。同時に、夏までに過年度の調査結果を踏まえて、スウェーデンの国連平和維持活動を考察した論文およびアイスランドの国際平和活動に関する論文を執筆し、査読付きの学術雑誌に投稿して年度内に刊行することを目指す。また、平成29年度は本研究課題の最終年度となることから、平和維持活動および国際的危機管理活動での北欧協力を分析した論文1本を執筆する予定である。
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