本研究プロジェクトは、金融改革における国際通貨基金(IMF)と世界銀行の影響と、こうした国際金融機関に対する米国及び日本の影響力を検討することを目的とするものであった。本研究プロジェクトの成果の一環として、世界金融危機以後になされたIMFの融資プログラムの改革を踏まえ、IMF加盟国における融資プログラムに関する米国の影響力が、世界金融危機の前と後で変化したか否かを1992-2015年のIMF加盟国のデータベースを用い計量的に分析し、年報政治学2017年I号に論文として刊行予定である。この研究の分析結果からは、世界金融危機前には、米国はIMF融資プログラムの承認に有意な影響を与えていることが従来の先行研究通り示されたが、世界金融危機後には、こうした米国の影響は顕著に減少したことが明らかとなった。また、日本が米国から独立してIMF融資プログラムの承認に与える影響は、世界金融危機前の期間のアジア地域においてのみ認められた。従って、IMFが世界金融危機以降に行ってきた改革は、全ての加盟国を公平に扱うべきであるというIMFに対する批判に応える方向で変化するものとなっていると思われる。しかし、このようなIMF改革の努力の成果が、米国の新大統領のもとでも継続するか、今後引き続き検討が必要であろう。また、金融改革データベースのコード化が終了し、これらを用いて米国と日本のIMFや世界銀行への影響も検討し、学会発表を米国シカゴにて行った。
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