中国外交については、建国から今日に至るまで堪え得る、一貫した視座に立脚する研究はなお少ない。中華人民共和国が国際社会において高い地位を得ると同時に、中華民国の正統性を失わせるため、可能な限り多数の国と、可能な限り有利な条件での国交樹立を目指す「国交樹立外交」が中国外交の基軸になってきたという仮説を検証するため、本研究においては、建国初期の6年間(1949年秋から55年夏まで)に中国が行った国交樹立をめぐる活動をマルチ・アーカイヴァル・アプローチに基づき実証的に解明することを目指してきた。 初年度(H25年度)にはインドネシアの事例について中国で学会報告を行った。中国のジャーナルに論文が掲載された。同年度にはオランダでインドネシアとオランダに関する史料収集も行った。H26年度にはビルマ、インド、フランス、台湾で史料収集を行った。平成27年度にはインドとイギリスの事例に取り組んだが、史料が膨大にあるため、1年間延長して継続することになった。 最終年度となったH28年度には、夏季にイギリス、秋季にノルウェーとスウェーデンで関連史料を収集した。また、秋季にはアジア政経学会秋季大会でビルマと中国の国交樹立について報告することができた。学会提出論文を基に学会誌への投稿を準備している。冬季にはインドネシアと中国の国交樹立について、オランダで得た史料を追加して加筆修正した論文が中国のジャーナルに掲載された。なお、H29年度になるが、インドと中国の国交樹立について日本国際政治学会での報告が確定している。 全体を通じて、本来不要な条件を設定して自らに有利な展開に持ち込んだ毛沢東外交の巧みさと、グローバルにはイギリスが、アジア地域ではインドが、国際社会における対中政策のハブとなっていたことが浮かび上がってきた。今後はヨーロッパ諸国の事例についても研究を進め、可及的速やかに単著として発表したい。
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