研究課題/領域番号 |
25380221
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
桃田 朗 立命館大学, 経済学部, 教授 (30309512)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | マクロ経済学 / 人口経済学 / 経済成長理論 / 少子高齢化 / 人口減少社会 |
研究実績の概要 |
このプロジェクトの目的は、少子化が持続し、人口減少が続く中で、わが国の経済構造がいかなる方向に変化するかについて、ビジョンを提供できるような経済理論モデルを探ることにある。 平成27年度には前年度にひきつづき、「非婚化」を原因とした少子化が経済成長経路や経済厚生に与える影響について重点的に考察をおこなった。平成24年度から取り組み始め、足掛け4年にわたった論文執筆作業は、平成27年度に完成させることができた。この研究成果は公共経済学分野のトップジャーナルであるJournal of Public Economics誌に掲載された。 わが国では1950年以降、出生率の低下が観察されるものの、出生率低下のパターンは、近1950年当時と近年では大きく異なっている。1950年当時には、家庭内の子供数が減少することが主要因であった。それに対し、近年は、結婚をしない(家庭を設けない)大人の割合が増えたことが子供数減少の主要因であることが指摘されてきた。 これまでの経済成長理論は、出生率低下のパターンの変化に注意を払うことなく、少子化が一国の経済成長に及ぼす影響を分析してきた。そして、各種世論調査によると少子化を不安視する声が優勢であることとは対照的に、少子化は一人当たり所得の成長にはプラスであるとの主張がなされ続けてきた。 このプロジェクトでは、近年の少子化の要因となる「非婚化」をモデル化し、少子化が一国の経済成長や経済厚生に及ぼす理論的影響を分析した。そして、従来主張されてきた、少子化は一人当たり所得の成長にはプラスとの主張は成立しないことを示した。本プロジェクトの意義は、研究計画書にも書いたとおり、今日の少子化が起こるメカニズムを適切にとらえた理論モデルを構築し、経済厚生の視点から少子化問題を議論することにある。今回の理論分析はこれに十分に応える成果だといえる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクトの目的や意義に十分に応えることができる研究成果を平成27年度にあげることができた。論文数といった量的な点からはやや少ないが、分析の質の点からは、きわめて順調に研究が進んでいるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度には以下のことを行う予定である。 (1) 新たなテーマとして、人口成長と経済厚生の関係について、1976年にサミュエルソンが述べた「Serendipity定理」の理論的再検討を行う。 (2) これまでにひきつづき、今日の少子化が起こるメカニズムを適切にとらえた理論モデルを構築する。
研究成果は学術論文の形でまとめ、それを国際的査読雑誌に投稿するとともに、国内外の研究会や学会で発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度中に新たに開始しようと考えていたテーマへの着手が遅れたため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
論文の執筆にかかわる研究資料などの購入や研究打ち合わせのための費用に充てる予定である。
|