このプロジェクトの目的は、少子化が持続し、人口減少が続く中で、わが国の経済構造がいかなる方向に変化するかについて、ビジョンを提供できるような経済理論モデルを探ることにある。当初の最終年度は2017年度だったが、分析を継続して行うため、2018年度までの延長が認められた。 前年度には、人口成長と経済厚生の関係について述べた「Serendipity定理」を分析した成果を人口経済学分野の英文査読付き学術雑誌、Journal of Demographic Economicsに投稿していた。 本研究の意義は、定理のもとで達成される均衡が必ずしも安定でないことを示したこと(「Serendipity定理」が示す政策的含意が成立するためには、均衡が安定であることが重要である)と、安定性を無視して政策を実行することが、経済厚生を引き下げる危険をもつことを指摘した点にある。投稿論文では、この点を定性的に示していたが、編集長から定性的な分析に加えて、数値分析(定量分析)を追加することを要請された。 これを踏まえ、2018年度に定量分析を実施し、論文で提示した状況が、現実においてどの程度起こりうるかを分析した。そしてそれが現実に起きる可能性を無視できないことを提示した。(具体的には、実証的に妥当とされるパラメータ値の範囲で、モデルのシミュレーション分析を行った。あわせて、貯蓄率や全要素生産性などの主要パラメータの値の変化が、結果に及ぼす影響についても分析した。)査読者および編集長は、分析の内容に満足し、この論文は、Journal of Demographic Economicsより2019年3月に公刊された。これにより、計画書で記載していた事柄を完了させることができた。
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