研究実績の概要 |
本研究の最終年度にあたる平成27年度には,マウストラッカーを用いた被験者実験を実施した.被験者には,二つの投票ゲームのうち,自分にとって有利となると思われるものを一つ選択するという試行を繰り返し行ってもらった.実験画面では,その選択に際して被験者が参照すべき情報はすべて隠されており,各情報を見るには,その情報を隠しているウィンドウ上にマウスを移動させ,クリックする必要がある.これは選択の結果として彼らが得る利得についても同様であり,自分の利得のみ,もしくは他の投票者が得た利得も参照しながら,各自が持つ票数と議決に対するその影響力を正しく学習できるのかについて,データをとった.この問いは,本研究の成果として刊行した論文において,将来の研究課題とされていたものであり,現在,データを慎重に解析している最中である. 本研究では,各投票者の持つ票数が異なる状況において,投票者の票数のリストが与えられた時に,各投票者の議決に対する影響力(投票力)を事前に推計することを可能にし,それに基づくより好ましい社会的意思決定システムを設計することを目標とした.現在までに得られた成果は,各投票者の投票力は最小勝利提携における相対票数に依存し,最小勝利提携の実現確率にはそれなりの規則性が見受けられたことである。これらは, “Coalition Formation in a Weighted Voting Experiment”(2014, Japanese Journal of Electoral Studies) において、紹介されている.日本語では,「組織と制度のミクロ経済学」(2015,堀,国本,渡邊 編著)所収の「重み付き投票実験における提携形成」という解説論文を参照して欲しい.
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