研究課題/領域番号 |
25380223
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 浩介 東京大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (30263362)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 資産バブル / 金融仲介 / 銀行 |
研究概要 |
金融市場の構造変化が銀行などの金融機関のリスクテイキング行動に与える影響は、学問的に重要な研究課題であり、政策的にも重要な含意を持つ。昨年度は、上記の問題を分析するための基本モデルとなるものを構築した。分析対象とした金融市場の構造変化は、社債市場などの直接金融市場の発展と、シャドーバンキング部門の発達の二つである。いずれの構造変化も、金融仲介において銀行の役割が弱まるという点で共通したものである。本研究ではそれを「financial disintermediation」と呼び、それが銀行の投機行動に与える影響を理論的に考察した。モデルは、バブルを含むマクロモデルである。本モデルにおいては、金融市場に不完全性が存在すると資産バブルが発生する可能性がある。 得られた理論的な結果は以下の通りである。社債市場の発達も、シャドーバンキング部門の発達も、共に、伝統的な銀行業の収益率を下落させる。収益率の下落は、銀行にバブル資産に投機をするというリスクテイキングの誘因を生じさせる。この点、二つの金融市場の構造変化は共通している。しかし、社債市場の発達は、バブル崩壊後の銀行貸し渋りによる資金供給減少をある程度緩和することができる。理由は、社債市場における金融取引は自己資本など銀行のバランスシートの状況に依存しないからである。その一方、シャドーバンキング部門が発達した場合には、バブルの発生と崩壊の両方のマクロ効果が大きくなるという結果が得られた。理由は、シャドーバンキング部門は一見銀行とは独立の金融仲介のように見えるが、貸し出し債権の債務保証などによって伝統的銀行部門と密接に関連しているからである。 上記の結果を、「Financial Disintermediation and Financial Fragility」という題の論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本モデルを構築するということが本年度の目標であったが、それを達成することができた。在ドイツの共著者との仕事のコーディネーションも良好であった。
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今後の研究の推進方策 |
完成した論文「Financial Disintermediation and Financial Fragility」をワーキングペーパーとしてまとめて、さらに学術雑誌に投稿する準備をする。 また、研究の半ばで気づいたことは、バブル資産に投資する理由が、いわゆる「高収益資産の欠如」だけではないということである。これは、ギリシャなどの債務危機後に現れた、ロンドンやフランクフルトの不動産価格騰貴に代表される現象である。これは、今までは安全であると思われた国債が安全資産ではなかったということに起因しているのではないかと思われる。この事象は、「安全資産の欠如」とでも言うべき現象である。安全資産の欠如とバブル発生の関連も、重要な研究、政策課題であると思われるので、その方向についても研究を進めていきたい。
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