研究課題
消費関数と貯蓄関数の説明変数である「期待所得」は、個人の将来期待を反映しようとするものであるが、もともと正確に観測することが難しい変数である。そのため、既存研究では、期待所得に対して強い仮定を課して、期待所得の係数を推定してきた。例えば、実証分析において、調査対象者に尋ねても期待所得については回答が得られないことがよくある。このとき、被説明変数である消費や貯蓄がすべてそろっていても、説明変数である期待所得の未回答のデータは欠損値となってしまう。従来の計量経済学の方法では、この欠損値について、「独立の仮定」という強い仮定を課して、期待所得の係数を推定する方法がよく使われてきた。しかし、この「独立の仮定」が満たされないときには、係数の推定値にはバイアスが生じる。前年度に引き続く当該研究においては、このような強い仮定を課さずに、この期待所得の係数がありうるバウンド(範囲)として推定する部分識別の計量手法を開発した。具体的には、Manski等の部分識別の方法を発展させ、説明変数のデータに欠損値があるときは、ある一点ではなく、説明変数の係数がありうるバウンドを識別する方法を開発した。そして、Moment Inequality推定法を応用して、識別したバウンドとその信頼区間を推定する方法を開発した。研究結果は、Discussion paperにまとめ、さらに当該研究と関連する研究論文を査読付き国際学術誌に公刊した。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Research in Labor Economics, Special Issue on Inequality: Causes and Consequences,
巻: 43 ページ: 224-286
10.1108/S0147-912120160000043003
経済セミナー
巻: 2・3月号 ページ: 82-91
巻: 4・5月号 ページ: 75-86